黄色の映像 ページ9
先程までの血だらけ部屋の映像と切り替わり、今度は薄暗い路地となった。
魂はこの場所を知っている。
貧民街にある、弱肉強食の激しい地区だった筈だ。
何故、こんな事を知っているのか。
それすらも曖昧になってしまう程に、強制的に映像を見させられ続けられた事で魂の存在は溶け始めていた。
「____やめろ、殺すなッ」
「__《名のないシシャ達は、己の大切な人達に時間を分け与える》
____【時空操作】」
聞き慣れた詩の一節でも唄っているかのように、耳に残りやすい聞き惚れてしまう声で幼女は言う。
幼女といっても、先程までの傷だらけの幼女と打って変わり、髪を短く切り血塗れの襤褸を身に纏った、貧相ななりをした少年に近い格好だ。
何故、ここまで少年に近いのに幼女だとわかったのか。
それを魂に問うものはいなかった。
幼女は骨の浮き出ている腕を力一杯にしならせ、目の前で尻をついた男に向かって己の血を投げ付ける。
死にたくない、と言っていた男の残骸は目も当てられない程に壊れ、周囲の人間を怯えさせた。
「【名のないシシャ】」
傷つけた己の掌を赤の文字列が包み、滴っていた血を止める。
たった一人で血を浴びる事なく、弱肉強食のこの世界で生きていく。
無表情に、冷酷に、ただ生きる為だけに人を殺していく幼女は。
____《死者》の様に、感情を宿さない瞳で人の命を嬲る。
____《使者》の様に、誰かから命を授かったかの様に命を弄ぶ。
幼女の周りには幾多にも重なった死体が、幼女を崇める様に倒れていた。
或る者は、己の贓物を撒き散らし乍。
或る者は、血に脳漿を交えひれ伏し乍。
或る者は、無くなった半身に対し、原型の残った耳鼻から滲出液を垂れ流し乍。
無残な己の死骸を世に晒し、それをどうすることもできない死者の体を、幼女は真紅の血に塗れた瞳で見下ろした。
「____これも全て運命」
薄汚れた弱肉強食の、赤に塗れたこの場所で、《シシャ》は生まれた。
____映像は、其処で終わる____
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作者名:鸞宮子 瑩 | 作成日時:2019年11月24日 13時