赤色の映像 ページ6
目の前には胸から血を拭いて倒れる女性。
琥珀色の瞳を細め、目の前で呆然と光景を見る幼女に、女性は手を伸ばした。
「母様?」
五歳に及ばない幼女にこの光景はきつすぎた。
幼女は女性の状況を理解出来ぬまま、母を呼び続ける。
女性は濁った瞳に、最後に最愛の我が子を焼き付けようと、笑みを浮かべた。
口から血が溢れ出ても、笑みを作ったまま女性は幼女に手を伸ばす。
「ごめん、なさい。
守り、きれなく…て。
ごめ…なさい……。
最後、ま、で…見届け、られ、無くて」
幼女の頰に軌跡ができた。
女性は、愛おしげに、壊れないように幼女の髪を指で梳く。
幼女は、冷たくなっていく母の体を触り、温めようと寄り添った。
腕を持ち上げる力のなくなった女性の手は崩れ落ち、代わりに、涙が頰を伝う。
これが最後だとわかった女性は、精一杯の愛を、最後に言の葉に乗せた。
「____愛してる」
琥珀色の瞳は、長い睫毛に縁取られ閉じられる。
震えていた唇からは、とめどなく血が溢れ出す。
貫かれた心臓を中心に、地面に血の花が咲いた。
枯れた女性の涙を見た幼女は。
「母様?
母様、母様、母様。
起きて、母様」
年に合わない重すぎる現実を目の当たりにして、幼女はひたすら母の体をゆすり続けた。
いくら呼びかけても目を覚まさない母に、目が涙で一杯になり、目の前の母の顔が霞む。
血に濡れた腕で、幼女は己の涙を拭い、ひたすらに母に呼びかけた。
「おい、餓鬼。
手前の母親はもう死んだよ、とっとと来い」
顔が涙と鼻水でグズグズになった幼女の襟を引っ張り、男が言った。
____死んだ?
____死んだって何?
____母様が?
____そんな訳ない。
____だって母様は。
引き摺られながら、母親を再び見る。
其処には胸が貫かれ、血で半身を濡らし、それでも尚笑みを浮かべた母親がいた。
____《死んだよ》
____嘘だ。
____だって、母様はまだあんなに綺麗に笑ってる。
____嘘だ。
嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘、嘘、嘘、嘘、嘘、嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘____
.
「____何の為に、母様は死んだの?」
.
____映像は、其処で終わる____
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作者名:鸞宮子 瑩 | 作成日時:2019年11月24日 13時