青色の映像 ページ5
「＿＿＿＿ハッピバースデイ、トゥーユー、ハッピバースデイ、トゥーユー」
魂は、ある空間を彷徨っていた。
その先に見えたのは、笑いながらバースデイソングを歌う、藍色の髪をした年若い美しい女性。
琥珀色の瞳には慈愛を称え、目の前にあるケーキを見つめる幼女を見ていた。
女性と同じように藍色の髪を長く伸ばした幼女は、蓮と同じ丸い大きな深紅の瞳を更に丸くしていた。
女性が、「おめでとう」と言って歌い終わると同時に、幼女は愛らしい笑みを浮かべて笑った。
「＿＿母様、有難う！」
「うふふ、喜んでもらえて良かったわ。
きっと、天国にいる父様も喜んでるわよ」
優しい手つきで幼女の頭を撫でる女性。
仲睦まじい母子の様子に魂は羨望を覚える。
自分が見たかったこの光景を続く事を願い、魂はただその場に漂い続ける。
＿＿二人の母子の幸せを、許さない者がいた。
「＿＿＿＿今晩は、おや、今日は誕生日なのですね？
丁度良かった。
＿＿＿＿とっておきの誕生日プレゼントを渡せそうだ」
そう言って卑しく笑うのは、無精髭をたたえた小太りの男だった。
女性は幼女を抱き寄せ、「どちら様？」と気高く答えた。
切れ長の女性の目が真っ直ぐ男を見据える。
「ちょっとした組織のものだよ。
さて、山田 悠介の妻子、山田 緋夏、そして蓮。
あってるか？」
「……もし、違うと言ったら？」
「＿＿＿殺す」
拳銃を向けてくる男の目に幼女を晒さないよう、女性はより一層強く幼女を抱き寄せた。
警戒を解かぬまま、女性は「あってるわ」と微かに頷く。
男は其れを見て下品な笑みを浮かべ、「ついてこい」とそれだけ言った。
＿＿＿＿映像は、其処で終わる＿＿＿＿
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作者名：鸞宮子 瑩 | 作成日時：2019年11月24日 13時
