*~晩酌で告げし夢は~ ページ30
『_____ねえ、太宰さん』
甚平を着た太宰に寄りかかるのは端麗な顔をほんのり赤く染めた蓮。
何時もとは違う女らしい格好に片側の髪を耳にかけているので、なんとも言えない色気があり、太宰は思わず息を飲む。
「なんだい?」
『呼んだだけです、太宰さん太宰さん』
ひたすらに名前を呼んでくる蓮の頭を撫でる。
すると彼女は嬉しそうに口角を上げ、太宰にすりよった。
その可愛さに悶絶して思わず反対を振り向くと、視界に飛び込んで来たのは酔い潰れた中原と、日本酒を酒杯に注いで飲み干す尾崎。
この場にいる誰もがほんのりと頰を染め、酔っているのがうかがえる。
恐らく一番酔って居ないのは太宰だろう。
太宰はストッパーをかけて居た。
酔って居ないと制御が出来ず、このまま蓮を襲ってしまうかもしれない。
今もかなり限界に近づいて来ている。
若し襲って仕舞えば、彼女に申し訳ないし、尾崎からの仕返しが怖い。
悲しく思いながら、蓮を見やった。
「どうしたんだい、そんな顔をして」
気付けば上目遣いで此方を見上げて来ていた蓮。
彼女の薄い唇は、尾崎が化粧でもしたのだろうか、いつもよりもほんのり赤かった。
熟れた果実の様に噛り付きたくなる唇を蓮は震わせる。
太宰は思わずその唇に見惚れてしまった。
自制心がなくなってくる。
段々と、唇が近づいていき、そして_____
『_____ねえ、太宰さん』
もう少しで唇が重なる、と言うところで蓮が言葉を発した。
失われかけた理性が戻ってくるのを感じ、冷や汗をかく。
そして尚も此方を見上げてくる蓮の頭を膝の上に乗せると、蓮は続ける。
『俺、夢を見たんですよ。
大きくて、手が届かないはずなのに、馬鹿馬鹿しい夢を』
蓮の手が真っ直ぐ伸ばされる。
だがそれは何を掴むこともなく空を切り、そして音を立て彼女の腹に落ちた。
そして、誰もが見惚れてしまう様な、年不相応な微笑を刻み、言った。
『_____光の世界を、太宰さんといきている夢』
「………綺麗だったかい?」
そう聞けば、彼女は嬉しそうに笑った。
『ええ、とても』
細められた彼女の瞳が塞がれ、次には規則的な寝息が聞こえた。
愛おしい蓮の寝顔を見ながら、太宰は悲しげに微笑んだ。
「_____君が望むなら、その世界もいいかもしれないね」
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作者名:鸞宮子 瑩 | 作成日時:2019年11月24日 13時