本当の気持ち ページ2
「____蓮!」
蓬髪の男が、薄汚れ、人里離れた屋敷に来ていた。
額に汗を浮かべ、草木の生い茂った、手入れの入ってない庭に足を踏み入れる。
入り口と思しきところが微かに開いており、そこから中を覗いた。
それと同時に、吐気を覚えてしまう様な刺激臭が鼻をつく。
外套で口元を押さえ、後ろで黒服達の制止が入るのも聞かぬまま、玄関を通り抜けた。
どんどん濃くなっていく臭いに顔を顰めながらも足を止めない。
____全て、自分が悪いのだ。
****
「おい太宰、まだ蓮は戻って来てねェのか?」
「……ああ、まだだよ」
蓮が任務に行って一週間。
地方の抗争の制圧に行っているわけではないのだ。
遅すぎる。
当初は知らない等と言っていた太宰も、日に日に以前よりも仕事に手がつかなくなっていった。
元々、報告書などにはサボり癖のあった太宰が更に仕事をしなくなるとなれば大問題。
尾崎と中原は頭を抱えていた。
そんなある日。
尾崎は太宰がここ最近と同じように執務室でダラダラしているのを発見し、声をかけた。
「……のう、太宰。
蓮を迎えに行ってくれはせんかえ?」
尾崎が言うと、太宰はゆっくり瞼を持ち上げ、不貞腐れたような表情で言った。
「なんでさ」
「其方が蓮に一人で任務に成功したら認めてやると言ったのじゃろう?
太宰ならば、蓮の性格はよく知っておるはず。
あの子が、今どうなっているかわかるじゃろう?」
尾崎は、落ち着いた声音で言った。
だが、所々声の震えが感じられ、太宰には彼女がどれほど蓮を心配しているのかわかる。
太宰はそっぽを向き、子供のように言った。
「そんなに心配なら姐さんが行けばいいじゃないか」
太宰の言葉に尾崎は数秒押し黙る。
それから、先程までの落ち着いた声とは異なる、怒気を孕んだ声で太宰に告げた。
「私とて、一番にあの子の元に駆け寄ってやりたいわ。
けど、あの子が望んでいるのは私じゃのうて、太宰じゃ。
私が何でこんなに、あの子が心配で心配で仕方ないのに、この気持ちを抑えてるか判るかえ?」
太宰は無言で尾崎を見た。
尾崎は、蓮と同じ赤の瞳で、微かに悲しさを交えた瞳で太宰に続けた。
「____太宰、其方が蓮へ抱いておる感情に気付いてないからじゃ」
その一言で、太宰の鳶色の目は大きく揺れた。
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作者名:鸞宮子 瑩 | 作成日時:2019年11月24日 13時