弐拾 ページ22
「____織田作之助だ」
そう告げた男を見れば、彼は先程からその整った顔立ちを一切変えることなく喋る。
其の儘横にいる教授の様な眼鏡をかけ、黒子のある男を見ると彼は眼鏡を直し言った。
「私は情報員の坂口安吾です」
坂口、と口の中で反復させる。
何処か見覚えがあったと思えば、彼は少しマフィア内で有名な有能な情報員だ。
そして織田は____
『………あれ、織田さん、この前掃除やってませんでした?』
「一昨日の事なら俺だろう」
「織田作は少し特殊だからねえ」
しみじみと言う太宰の口調はどこか親しげで、其処からこの三人は交友が有るのだと伺えた。
きっと織田は清掃をやっていたので下級構成員。
そして坂口は情報員。
太宰は最年少幹部。
なんともチグハグな組み合わせだ。
首を傾げながら、用のなくなった刃物を懐にしまった。
太宰は其れを黙って見ているので、思わず身が固まる。
「これから、四人で何時もの酒場に行こうか」
何気なく告げた太宰に、思わず目を見開いた。
貴方はまだ仕事がある、と言おうと口を開きかけたところで織田と坂口が付いていくのを見て、
口を閉じた。
胸の辺りの何かがこみ上げてくる気持ちに舌打ちしながら前髪を掻き上げた。
「____ねえ、来ないの?」
『____ッ』
そう言って態と腕を掴んできた太宰に驚愕し、反射的に身を引いた。
そんな様子の蓮を見て太宰は目を細め、嫌悪感を晒しながら言った。
「………体術も少しはマシになったし、
人にも慣れてきてるからそろそろかなって思ってたんだけどね。
やっぱり君は弱くて全然駄目だ」
『………そんなの、自分でもわかってますよ』
口の中だけで呟いたはずのその言葉を太宰は聞いてか聞かずか、
気付いた時には二人の元に戻っていた。
蓮は不安げに首を掻きながら少し小走りで先を行く三人に追いつく。
初めて見る太宰の心から楽しそうに会話する姿を見て、蓮は思わず凝視してしまう。
だがすぐに我に返って、三人の三歩ほど後ろを、程良い距離感で歩いていた。
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作者名:鸞宮子 瑩 | 作成日時:2019年9月19日 21時