リアル

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…ん？

私のこと好き？

いやいやいや。

ない！

あるわけない！

だって、

出会ったばかりだし。

おまけに私、

何一ついいとこ見せてない。

からかわれてるみたいで、

なんかムカつく！

そうだよ。

好きになるわけないじゃない。

『…仮に、登坂さんが私のこと好きなだとして、あんなことしてもいいと思ってんの？』

「…だめ？」

『当たり前じゃん！私が…登坂さんを好きじゃなきゃ』

「…好きじゃないの？」

それ聞く？

好きだよ。

すごく好き。

だけどね。

『あのね、今朝は好きだったよ？だけど、今はわかんない』

正直に気持ちを話す。

じーっと私を見て、

そして、だんだんと怖い顔になる。

ひえええ。

なんで怒ってんの？

そんな顔したって…、

有名人だからって思い通りになんて、

ならないんやから！

登坂さんを見ると胸が苦しくて、

声を聞くとドキドキする。

今すぐ押し倒して

なんだかんだしときたい。

でも！がまんっ！！

だって、これ、からかわれてるだけやん。

絶対！

…知らんけど。

「好き…」

へ？

え？

ええっ！？

「オレ、Aのこと好き」

2回も言う？

「Aは？」

だから…

さっき言ったやん。

「オレのこと、男として、どう思う？」

『…わからん』

私は、

本当の登坂さんを知らない。

テレビ番組や、

雑誌の記事や、

ブログやインスタ。

そこにいる登坂さんしか、

知らない。

実物を見た時は本当に好きかもって、

思ったけど。

本気で好きになって、

すぐに捨てられたらイヤだし。

実は誰でも良くて、

"とりあえず私"

だったりしたら、

すごく悲しい。

だから。

『ごめん…わからん』

これは、私の自己防衛。

「そう。…じゃあ、仕方ないな」

そう言って、

登坂さんはズンズンと歩き出す。

送ってくれって言ったくせに。

私を置いて歩いて行く。

そうかと思うと、

少し離れたところで、

立ち止まって振り返る。

「本当に行っちゃうからな」

…何それ？

クソ可愛い！

私をじっと見つめて、

また歩き出す。

だんだんと遠くなる登坂さんを、

同じ場所で見つめる私。

意外とゴツい体をして、

並外れた美しい顔で、

うっとりするような、声で。

「今日は帰るけど、次会ったら好きって言わせるから」

そう言って、視界から消えていった。

なに？あれ。

登坂さんは、本当に、

私を好きなの？

…そんなわけ。

とにかく！

ぜっっったい、

騙されない！

好きだけどなっっ！

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