リアル

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昼休みの社食は、混んでいる。

でも、すぐに見つかるんだ。

一番後ろの端っこ。

そこが山田の指定席。

「遅いやん！」

いきなりのクレーム。

なぜか定食を食べながらの山田。

『お金持ってるやん』

「アイツがなんか知らんけど、

定食バーン置いていった」

トモちゃん。

不器用か！

『良かったやん、食いっぱぐれなくて』

「まーな。時間ないし、急ぐわ」

そう言うと、みるみる食器を空にする。

いつも、食べながらではなく、

食べ終わってから話すスタイル。

「ケンカしてん」

『みたいやな。なんで？』

「結婚したいっぽいから、

結婚したいならしよーぜって言ったらな？

めっちゃ怒られてん」

ほんまデリカシーないな、こいつ。

『したいならってとこがアウトやな』

「なんで？」

『あんたの意思が入ってないから』

「したくなかったら言わへん」

『でも、イヤやん。

あんたがしたいって気持ちを

ちゃんと伝えなアカンのちゃう？』

「なるほどな。もっかい言うてみるわ。

…なんで断るねんって思って

めっちゃ腹立ったけど。

そういうことなら、簡単や」

簡単なんや。

山田のこういうとこ、すごいと思う。

素直で、まっすぐで。

トモちゃん、見る目ある。

『てか、結婚すんの？』

「するよ。

オレ、アイツのこと好きやん。

ほんで、アイツもオレのこと好きやん。

毎日会いたいし、毎日チューしたいやん」

あっ、そ！

あんなに冷たくされてるのに、

トモちゃんが山田のこと好きなのは、

ちゃんと知ってるんや。

『いーなー』

「なに？あ、お前もなんか悩んでるんやった？

聞くわ、あと10分で返事せなあかんから、

3分でまとめて発表して」

私のことはいいんだけど。

でも…聞いてみるか。

『一緒に住もうって言われてさ。

住むことになってんけど。

向こう、忙しいし、

毎日、待ってる時間ツライ気がしてさ』

しばらく考えて山田が言った。

「お前、まだまだやな！

待ってるのも楽しめるのがホンモノや！

なんでツライねん。

ほんまに好きなんか？」

好きじゃないのかな？

いや、好きだ。

なんでツライんだろ。

「おっと、タイムリミットや。

いらんこと考えんと、

もうすぐ帰ってくるー！わーい！

…でいいんちゃうん？力抜けや」

そーなんだけどさ。

「あのな、トモはオレと会った瞬間

ものすごい甘い顔すんねん。

そういうとこ、オレめっちゃ好き」

照れずに言える山田が、

とてもイケメンに見えた。

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