リアル

☆39 ページ39

なるべく、

おみくんのことは考えないように、

とにかく仕事に集中した。

でも、間が空くと、

色々考えちゃう。

いつも以上に集中しないと

「どしたん？今日、頑張るやん、怖い顔して」

これまた同僚のトモちゃん。

…怖い顔って。

『思いつめてんねん』

「思いつめてないやろ？

思いつめてる人、

あんまりそんなん言えへん」

そりゃそーだ。

私のは贅沢な悩み。

そして、一緒にいる限り続く悩み。

『あ、山田に昼休みコーヒー奢れ言われた』

そう言った瞬間、

チッ。

舌打ち。

かわいい顔して、舌打ち。

トモちゃんは、山田の彼女。

「ケンカ中やねん」

『あ、そーなん』

いっつもやん。

『どーせ、トモちゃんの嫉妬やろ？』

「…私も行こかな？昼休み」

『来る？』

来る？って聞いたものの、

トモちゃんとは昼休みの時間がズレている。

「行かん！何言ってたか報告して」

『わかった！』

トモちゃんはすごくかわいい。

モデルみたいに。

それやのに、山田と付き合ってる。

だって山田がいいやつだから。

山田が大好きだから。

だから、いくら告られても、

他のやつには見向きもしない。

山田以外、見えてないんやって。

そういうとこ、出せばいいのに。

トモちゃん、山田の前ではとても強い。

そして、とても冷たいフリをする。

なんで？って聞いたら、

恥ずかしいからって言う。

だから、私、

両方のスパイになって、

お互いがどれだけ好きかってことを、

伝える役目に任命されている。

「ねぇ、朝来るときさ…

山田と手を繋いでなかった？

別にいーけど」

別に良くないくせに。

『繋いでないよ。引っ張られてた。

手首持ってビューンって』

「そう。まあ…いいんだけどさ」

よくないくせにー。

『昼休みの予約したかったんちゃう？』

「私の山田なのに…」

かわいいな。

トモちゃんは。

大丈夫！

山田はトモちゃんしか見えてない！

『トモちゃん、好きがダダ漏れしてる』

そう言うと、一瞬で真っ赤になって、

「だってさ。私の手は引っ張らないのに」

ほらね。

すぐ嫉妬する。

『だって、トモちゃんとは手を繋げるやん』

「そうだけど…！ねぇ、A。

山田にちょっかい出したら、

あんたが一番嫌がることするからね」

こんなセリフ慣れてる。

慣れてるんだけど。

怖すぎるよ、トモちゃん。

『山田に興味ないってば』

美人の怒り顔って、

ほんま怖い。

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