リアル

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ゴロンと横になって

天井を見上げると、

涙がこめかみを通過する。

どうして泣かなあかんねん。

登坂さんのこと好きだけど

私は最後まで抗った。

気持ちに蓋をして、

鍵までかけて。

出てこないようにしていたのに。

こじ開けて、

包み込んで、

そっと返してきたのは、

登坂さんやん。

なのに、

笑顔でテレビに出て、

たくさんの女の子の心を、

あっためてあっためて、

ぽわっと幸せにしてあげてる。

私はそれをテレビ越しに見る。

彼女やん、私。

その笑顔は私のやん。

なぜだか心の中は

氷点下まで温度を下げる。

私の心もあっためて。

あっためてよ。

届かない想いは、

別の箱に詰めて鍵をかける。

大人だもん。

泣きながら

心で泣きながら。

笑ってやる。

「ねーちゃん…」

あ、くそ。

こいつがいた。

忘れてた。

泣いちまった。

『昨日のワンピース思い出した』

流れた涙を、

昨日見ながら散々泣いた

アニメのせいにして、

やり過ごそうとした。

「嘘つけ」

バレバレだ。

『お前嫌い！』

「別にいい」

そーかよ。

「メールとか電話とかすればいいじゃん」

『誰に？』

「ほんと、そーゆーとこなっ」

どーゆーとこだよ。

わかってるけど。

♪〜

ラインだ。

表示は、登坂さん。

タイミングいいのか、

悪いのか。

私はそっとラインを開く。

→"なんで泣いてんの？"

スマホを置いて

後ずさる。

なんで？

なんで？

キョロキョロと見回して、

行き着いた視線の先に

テレビの画面から

目を離さない弟。

睨みつけても、

一切こっちを見ない。

私は視線を画面に戻す。

どうしてって。

登坂さんはなぜ、

笑っているの？

わかってる。

仕事だもんね。

わかってる。

さみしくないんでしょ？

泣きそうなのを堪えるために

少しだけ自分勝手になってみる。

"寂しいからだよ！ばか"→

そう送ってから

少し気持ちがスッとする。

…いや、まて。

登坂さん、悪くない！

やばいやばい。

ごめん。

違う！！

慌てて送信を取り消す。

よかったぁぁぁ。

取り消し機能に感謝だな。

"ワンピース見てたから！"→

送り直すと、

すぐに既読がついた。

→"どっち？"‘

どっち？

ん？

どっち？

→"今日空いてる？"

→"空けといて！今日中に会いに行く！"

時間開けずに

連続で受信するラインは

一瞬で私を元気にする。

→"バカで悪かったな 笑"

見てたんか…。

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