リアル

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「いや、声、ダダ漏れだわ、恥ずかしい」

そう言うな、弟よ。

『ごめん。いや、毎回お願いしてんのに、いっこも効き目ないから、もしかしたら神さま、聞こえてないんかな？と思って』

神社です、登坂さん。

今日もあなたに会えるよう、

お願いしにきました。

「聞こえる聞こえないの問題ちゃうと思うわ」

そうかな。

声、出さんより出す方が、

効くと思うけど。

『まあいいやん。とりあえず…な？』

「な？言われても…」

弟は19歳。

若くていいな、このやろう。

『なーなー、考えてくれた？アレ』

「いや、おかしいやろ？オレ別にダンスも歌も興味ないし」

『やってたら楽しなるってー』

「いや、まずやんのかよ？」

EXILEのオーディション受けてくれっ！

そうお願いしてみたけど、

弟は首を縦に振らない。

まあ、そりゃそーだ。

私も弟も特に運動ができるわけでもない。

私ができる子なら、

E-girlsに入るべく、

ダンス教室なんかに通って、

頑張っているところだ。

「じゃ、オレ行くな？」

『あ、うん。じゃあね』

近所の神社に、

週に2回お参りに来る。

特に、理由はないんだけど、

おばあちゃんが小さい頃から、

私たちを連れてきてくれてたから、

ほとんど習慣だ。

朝、お参りに来て、

そのまま、弟は大学へ

私は会社へと向かう。

「あっ、あっ！ねーちゃん！ちょっ、来てっ！」

聞いたことのないトーンで、

あまりにも慌てふためいた弟の声に、

きっしょ…って思いながら、

とりあえず声の方に向かう。

弟がほとんど固まった様子で、

何かを指差して、

顔だけ私の方に向いている。

足元にはデカイ…なんだアレ？

私は弟の方へ回り、

指差す方向を見下ろす。

うっ、人やん。

面倒なもの見つけたな、おい。

はっ！

だんだんと足から頭へと視線をやると、

私の心臓は、やっぱりゾーキン絞りだ。

いたたたた。

これって。

この人って…。

登坂さん？？

まさかね。

しゃがんで髪の毛をそっとよけると、

美しい顔が姿をあらわす。

『登坂…さん』

「やんな？やんな？けっ…ケーサツ呼ぶ？」

いや。

何を言うんだ、弟よ。

ほらね。

ねーちゃん、さっき、

声に出してお願いしたやろ？

だから、聞こえたんじゃない？

神さまに。

これは、神様からのプレゼント。

ありがとうございますっ！神さま。

『家に、連れて帰ろう！』

「どうやって？！」

『あんたのその身長とガッチリ体型、今使わずにどこで使うねんっ』

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