×× ページ18
「...こ、怖かった〜」
神門の姿が完全に見えなくなった頃、冷や汗をかいた壁山がそう言って崩れ落ちた。
それを合図に腰を抜かすものや息を着くものもいる。
明らかに不機嫌そうな神門の声は、下手に強面の人物に怒鳴られるよりも肝が冷えた。
「神門は、何を思ってああ言ったんだろう」
一ノ瀬が俯くと、その言葉に各々が考え込む。
ふと夏美が呟いた。
「神門さんは吹雪くんと一緒にいたのよね？」
「あぁ、俺が吹雪を呼びに行った時は神門が交代して練習していたな」
鬼道がそれを肯定する。
一同がもう一度中でボールを蹴る吹雪に視線を向けた。
「もしかして、その時に彼自身から何か聞いたんじゃないかしら」
「吹雪から？」
円堂が夏美から視線を外して吹雪を見る。
苛立ちをぶつけるように練習を続ける吹雪からはまるで話ができる空気は感じられないが、鬼道は先程呼びに向かった時、妙に穏やかだった吹雪を思い出す。
練習を押しのけこちらに向かった吹雪が無理にでも神門を退かさないわけが無い。
鬼道は去っていった神門の後ろ姿を追うように廊下の先を見やった。
「神門が吹雪に何かを聞いたと仮定するなら、あいつの事は神門に任せるのもいいかもしれない」
「神門に？」
円堂が聞くと鬼道は頷いた。
「吹雪は神門といる時ある程度安定して見えた。それに神門は考えなしにあそこまで怒りを露わにするタイプでは無いだろう」
「そうだな...でも、吹雪のことは俺たちもできるだけフォローしてやれるようにしようぜ」
「もちろんそのつもりだ」
円堂の答えに鬼道も笑う。周りもそれを聞いて笑顔になると、それぞれまた練習へと戻って行った。
＿＿＿＿＿＿＿
「吹雪のこと、知ってたんですか？」
開口一番。
神門のそんな突然の質問に、瞳子が動揺することは無い。
そろそろバレる頃合いだとわかっていたのだろうか。
神門はそんな監督に対してやや不満げにため息をついた。
「その様子だと彼から聞いたのかしら」
「えぇ」
呆れた顔で神門が頷く。瞳子はそれをチラリと見やるだけでそれ以上のアクションは無い。
神門はそれに対し、この人の嫌われ上等な精神は考えものだなと、これから起こりうる出来事を想像して憂鬱になりこめかみを抑えた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 84人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜餅 - ストーリーの流れ作りやセリフ、心理描写などがすごく丁寧で一気読みしててすごく楽しいです。神門ちゃんも神々しくて性差のないセリフもミステリアスで推しになっちゃいました。続きいつか見られたらいいなと思います。 (4月21日 10時) (
レス) @page27 id: 4b77f742c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
