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あぁまずい。ここに来た目的も忘れて随分楽しんでしまった。
羽風薫と名乗った彼との遊園地はそれはもう楽しかった。
デート慣れしているのだろうか、こちらを楽しませつつ本人も楽しむことを忘れないので私が気を使う必要もなく、後半は随分はしゃいでいた気がする。
正直、何故ここにいるのかをすっかり忘れていたのだが一郎太から届いた『河川敷で試合をすることになったからできれば来てくれ』というメッセージを開いて我に返った。
それと同時に時間を確認し、本来の集合時間を大幅に過ぎていたことに気づいて冷や汗が出てくる。
「あれ、どうかしたの？」
飲み物を買いに行って戻ってきた薫が不思議そうな表情でこちらを見つめている。
はい、と渡された飲み物を受け取ってお礼を言いつつ、自分の立場やここに来た理由、そして今の状況を説明した。
「そっか...ごめんね、事情も聞かずに連れ出したりしちゃって」
「いえ、私も思い切り楽しんでたので...」
そもそも何もかもを忘れていた自分が悪いのだから謝らないでほしいと言うと、薫はそれでも申し訳なさそうな顔をしながらわかったと頷いてくれた。
「そんなわけで、私はそろそろ行かないと...」
「いいよ、というか元々連れ出したのは俺だしね。河川敷まで送って行かせて」
「え、いやそれは流石に申し訳ないですし...」
初めこそ声をかけたのは彼だが、後々連れ回していたのはむしろ私の方だ。
引き止めるために外へ向かおうとする彼の裾を引くと、こちらを振り返った薫はゆるゆると目尻を下げた。
「俺がもう少し君と一緒にいたいんだけど、だめかな？」
裾を掴んだ手を緩く握られ、そのまま人差し指で軽く擦られる。
もう片方の手が私の頬に伸びてきて、手の甲で頬を撫でられると私の中の断る選択肢は綺麗に消えてなくなってしまった。
顔も声も性格も品も良い男からこんな悩殺コンボを食らったら、何を言われても「はい」しか言えなくなってしまうのは最早自明の理だろう。
「デートの続きの許可をくれてありがとう。歩いてるだけでも退屈なんてさせないから安心してね」
そう言って私の手を握ったままあどけない笑みを浮かべるほうがいけない。きっとこの笑みで何人もの女性を虜にしてきたに違いない。
だから顔が熱くなるのも目の前の男を直視できないのも、私は悪くないのだ。
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桜餅 - ストーリーの流れ作りやセリフ、心理描写などがすごく丁寧で一気読みしててすごく楽しいです。神門ちゃんも神々しくて性差のないセリフもミステリアスで推しになっちゃいました。続きいつか見られたらいいなと思います。 (4月21日 10時) (
レス) @page27 id: 4b77f742c4 (このIDを非表示/違反報告)
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