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気が重い時間がやってきた。飛行訓練の授業だ。隣のパンジーの顔色は明るかった。彼女もおもちゃの箒でよく遊んでいたし、マルフォイの活躍を見れるのが嬉しいらしかった。
Aは微笑みを絶やさなかったが、返事をする声のトーンが少しばかり低くなるのは抑えられなかった。
Aは、箒に乗れないのだ。
乗れない、というと語弊がある。空が怖いのでも、高いのが怖いのでもないが、箒に自分で乗って早く飛ぶことが昔からAには出来ないのだった。
箒はゆったりと空の旅を楽しむツールだった。乗りこなすものではなく、優雅な移動手段なのだ。父親のヨシュアや弟のメロウはクィディッチが大好きで、よくスニッチを追いかけ回していたし、母のアナスタシアもAもそれを見ること自体は好きなのだ。
ただ、ひとりで早く飛べないだけで。
いくら練習しても、Aは飛べなかった。認めたくはないが、恐れているのかもしれなかった。
グラウンドには、既に多くの生徒達が集まり、見事にスリザリンとグリフィンドールに別れていた。もう授業ギリギリだ。グリフィンドールの間をわざわざ縫い、「邪魔よ！どきなさい！」と怒鳴り散らしながら、パンジーはマルフォイの隣へするりと居座った。
マルフォイはパンジーの登場がお気に召したらしく、せせら笑いを浮かべている。
Aはパンジーやマルフォイ達のいる中心からそっと離れた。……そっと離れたかったが、Aが動く度モーセのように人の波が割れる。
小さくため息をついて、Aはいちばん端に寄った。そこはカースト下位者の追いやられる場所だったらしく、目を剥いてちらちらと見られ、生徒達は体を強ばらせていた。
マダム・フーチが怒鳴りながら表れ、マルフォイに恥をかかせたのち、授業はつつがなく始まった。スリザリンの生徒は、既にフーチに対して良い感情はなく、刺々しい空気が流れた。
カースト下位の少女が、覚えながらAに箒を回し、Aは薄く微笑んで受け取った。Aは常に微笑みを絶やさない。どんな相手にも、基本的には。
ノブレス・オブリージュや気品ある態度は貴族の基本だ。
少女は微かに肩のこわばりを解いて、そっと下がった。それは、なんだか、上位者への対応が妙に慣れているように感じた。
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うたかた(プロフ) - 第一部隊さん» ありがとうございます。最近時間がなくてなかなか書けていませんが、脳内のスリザリン生活をゆっくりしたためたいと思います。 (2018年10月7日 12時) (
レス) id: 0c67ed22ac (このIDを非表示/違反報告)
第一部隊(プロフ) - 凄く心地の良い文章の書き方ですね。とても面白かったです。更新楽しみにしています。頑張ってください。 (2018年10月5日 20時) (レス) id: c19040a7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うたかた | 作成日時：2018年9月19日 13時
