Triangle -2- (ページ19)

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「いらっしゃい、ひかる。」

何度も踏み入れた、いのちゃんの部屋。

用意された練炭と、ガムテープ、睡眠薬。

それらが置かれている部屋に迎え入れられるのは、なんだか、今までのこと全てを許されたようで、自然と心が軽くなった。

「……いのちゃん、」

「んー？」

「なにがあったの、って、きいてもいい？」

「ん……おれはね、ひかる。
おれのすべてを、なくしたから、しにたいんだ。」

「……そっか。」

「ねえ、ひかる、」

「ん？」

「……おれ、ひかるのこと、すきだよ。すきだったよ、ずっと。
だからね、おれのこんなわがまま、付き合わなくてもいいんだよ……？」

さみしそうな笑みを浮かべるいのちゃんを抱きしめる。

「……いのちゃんにとってのちねんが、俺にとってのいのちゃんだよ。」

はじめて、いのちゃんに、口付けた。

そっと触れたぬくもりは、俺の心をじんわりとあたたかくした。

「……ひかる、おれのこと、抱いて。」

ドア以外のすべての隙間に、少しの隙間もなくガムテープを貼り終わった頃、
そう言ったいのちゃんは、ゆうるりと、ただいつもと変わらない美しい笑みを浮かべていた。

「すきなひとが、さいごなら、どれだけ汚くなったからだも、綺麗になるとおもうんだ。」

「……わかった。」

「……ごめん、」

「え？」

「ちねんは、言葉にできないくらい大切で……でも、ひかるのことも、だいすきで、あいしてるの……
こんな愛し方しかできなくて、ごめんね、」

そんな顔しないで、笑ってて。
きみの笑顔が一番、俺は嬉しいよ。

「……わかってるよ。
俺だって、いのちゃんへの好きとは別の意味でちねんのことは誰よりも好きだし、大切だから。」

安心したような笑顔を見て、自分も笑顔になる。
そう、それがいいよ。
俺はその笑顔が、だいすき。

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