きみは知らない（ym×in） (ページ14)

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side ym

「……って感じだったの」

「へぇ？」

翌日、知念と圭人が家に来てしつこく訊いてくるから、伊野尾ちゃんと出かけたのがどうだったかを説明した。
でも最後うっかりドキドキしたことまで話したのは失敗だったかも。
だって知念のニヤニヤが止まらない。

「なるほどねー。涼介は伊野尾ちゃんをかわいいと思ったわけだ」

「べ、別に深い意味じゃねぇよ！？ただ、その……」

「伊野尾ちゃん、かわいいもんねぇ」

ん？
穏やかな圭人の相槌。
救いの手……のはずなのに、今なんか引っ掛かった、ような。

……って違う、こんなこと考えてるからよくないんだって！！

「うわぁ、涼介のスケベ」

「なんでだよ！」

「じゃあなんで顔赤くしてるの？」

頭をぶんぶんとふったら知念がからかうように笑う。
圭人を見ても、なんだか嬉しそうににこにこしているだけだった。

「な、なんでもない、し……」

やめてほしい、調子が狂う。
どうしよう、昨日から俺、おかしいよ。
伊野尾ちゃんにドキドキしたり、慣れっこのはずなのに知念にからかわれて動揺するし、圭人の言葉にもやもやするし。
なんか変になった？

いや大丈夫、俺は伊野尾ちゃんの楽しめるものを見つけるお手伝いをしてるだけ。
伊野尾ちゃんがからかい上手であんな反応するのもいつものことじゃん？
なーんにも気にすることないんだから。

「それで、次はどこにいくの？」

「え？あー、どうしよう」

ひとまずからかうのはやめにしたのか、真顔に戻って尋ねてくる知念。
伊野尾ちゃんが気に入りそうなものって何があるだろ。

「どこがいいと思う？」

折角だから頼ろうと二人を見たら、顔を見合わせてニヤリ。
同時にこっちを向くからびっくりした。

「そーだなぁ、遊園地とかー」

「それは無理。てか俺だけじゃなくて伊野尾ちゃんもダメじゃん」

「まあまあ。じゃあ、水族館は？」

「はぁ？」

「伊野尾ちゃんお寿司好きだし。魚好きそう」

お寿司……好きだっけ？
圭人の発言はちょっとずれてる気もするけど、まぁいいか。
他に思いつかねぇし。

「んー、じゃあそうするかー」

「よし！決まりね」

知念がやけに楽しそうなのが気になるけど、もうどうでもいいや。
目立たなさそうな小さな水族館にでも行こう。
伊野尾ちゃん案外好奇心旺盛だから、魚についても興味もってくれるかもしれない。

……後に俺は、自分のこの単純さをつくづく後悔することになる。