きみは知らない（ym×in） (ページ12)

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その後も何事もなかったかのようにパフェを口に運び続ける山田。
リスみたいにほっぺたをふくらませて、どんどん器を空にしていく。

その平然っぷりが腹立つなぁと思っていたら、ふと自分の中で悪戯心がむくむくとわきあがった。
いい、これは名案だ。

「ね、いちご要らないの？」

「いる！」

「じゃあ、はい」

さっきの山田と同じように、いちごと生クリームをのせたスプーンを差し出す。
これでお前も照れまくればいいんだ。ふん。

ところが予想に反して、首を伸ばした山田は普通にぱくりとスプーンを口にふくんだ。

「んーやっぱりいちごは王道だね！」

「え、ちょ、山田？」

「ん？どうしたのそんなに慌てて」

やっぱり平然とした顔で首をかしげる山田を、俺は信じられないといった目で見た。
なんなんだろう、こいつのなかでは男同士であーん、とかするのは当たり前なんだろうか。

「あの、山田」

「なに？」

「や、ちょっとは照れたりとかさ。気まずくなったりとか」

「気まずく？なんで？」

まったく理解していないといった表情の山田に、俺は軽く目眩がした。
ほんとにそんな感情がないんだ、こいつ。

まあ山田が演技してなければ、の話だけど、別にこんなことで演技するこたぁないだろうし。

やっぱり知念とか圭人と普段からしてるんだろう。
そういえばテレビで圭人とケーキ分けあってた気がするし。

(……別に、俺だけにするわけじゃないんだ)

その結論に至ったとき、なんだかもやっとしたものが心に溜まる。
なんだろうこれ。今までに感じたことのない、変な感じ。

でもそれが何かわかる前に、俺の思考は中断された。

「え、そんなにいちご一人で食べたかったの？もう伊野尾ちゃんったら食いしん坊だなぁ」

「ちげーよ！別に、そんなんじゃ……！」

「そう？じゃあそういうことにしとくね」

唇についた生クリームをペロリとなめて、山田は嬉しそうに笑った。