きみは知らない（ym×in） (ページ11)

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「美味しそうだね」

「うん。食べてみる？」

「いいの？ありがと」

褒めたら快く分けてくれるらしいから、お礼を言って自分のスプーンを伸ばそうとした、のに。

「はい、どーぞ」

差し出された山田のスプーンに、俺は固まった。
……これはもしかしなくても、あーんってやつですかね山田さん。

「？食べないの？」

そんな俺をよそに首をかしげる山田。いや、なんでそんなに平然とスプーンを差し出せるのか。
だって楽屋とかならともかく、外だし、男同士だし、俺らそれなりに名のあるアイドルだし。

確かに俺は、人と『おいしいね』を共有するのが好きだ。一口ちょーだい、もよく言うけど、でも、それはこれとはまた別の話なのであって。

思っていることをなんて伝えたらいいかわからなくて、じっと山田を見つめてしまう。
くりくり、キラキラした大きな目で見つめ返されて、逆に居心地が悪くなった。

「……ありが、と」

観念して口を開ける。にっこり笑った山田は、優しくスプーンを口に運んでくれた。

「どう？伊野尾ちゃん好きな味だと思うんだけど」

「……うん、おいしい」

「よかった」

顔に熱を感じて、ああ今絶対赤くなってると思った。
山田は特に気にせずにこにこしてるから、更に恥ずかしいことこの上ない。

大丈夫、たぶん山田にとっては普通なのだ。
知念やら圭人やらには普段からよくやることなんだろう。慣れない俺が変に反応してるだけ。それだけだ。

「顔赤いよ？暑い？」

「なんでもない！」

でもやっぱり恥ずかしいから、否定する口調がちょっと強くなっちゃったのは許してほしい。