思いはチョコレートに乗せて【バレンタイン短編集】 (ページ9)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:8,879 hit

奥手女子×気になる先輩ページ9

気づいたら好きになっている、なんてありえないと思っていた。マンガや小説だけのお話。
　そもそも自分が恋するなんて思ってなかったし、高校に入るまで恋愛経験がない時点で私に恋愛なんて無理だと思っていたんだ。でも。

　高校１年の夏、私は初めて恋を知った。春先から何となく目で追いかけていた先輩が相手。友達に指摘されて初めて気がついた初恋。
　どこぞの少女漫画かって自分でも呆れたけど、意識したらそんな気はしてきた。

　恋に気付いた夏は過ぎ、モミジは散り、年は明けて、２月になった。今まで自分とは縁遠いと思っていたバレンタインがやってきた。
　友達には、
「決選だ」「告白だ」「チャンス到来」
と騒がれたが、私にはその気はなかった。

　先輩、古賀(人2)先輩はバスケ部に入っており(だから女バスに入っている私と接点ができた訳だけど)、今年男バスは大会でいいところまでいった。結局優勝は逃したものの３年の引退は遅くなり、新部長になった彼は今大変な時期。告白なんかで気を使わせたくない。
　そう話すと、友達は
「(人1)ちゃん奥手だなぁ」「もっと攻めないと!!」
となぜか怒られた。

　３年の先輩方は卒業していった。

　気がつかない内に、先輩は強豪バスケチームの主将、雲の上の存在となっていた。顔はもともといいから、女子の人気は急上昇、ファンクラブまでできる有り様。
　友達には、踏み出さなかった私が悪いって散々怒られた(いびられた？)けど、その頃には私もスタメンに入って大会で活躍していたから、恋とか何とか言っている場合ではなかった。
　女バスは予選落ち。11月の時雨の中、笑顔で引退していった女バスの先輩たちの思いを引き継ぎ、私たち２年は来年に向けての練習をスタートさせた。
　男バスは準決勝まで行った。学校初の快挙達成に高校を挙げて応援したのだが敗退。古賀先輩の悔しそうな顔は、瞼の裏に焼きついた。