思いはチョコレートに乗せて【バレンタイン短編集】 (ページ4)

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荷物まだ教室なんで。
　そう言って下りた階段は、行きの何倍も長く感じた。

　フられたも同然だ。全く意識してませんって証明したようなものだ。
　教室では、すでに私の用意したチョコは完売していた。残っている生徒もまばらだ。
「…まった、ハデに食い散らかしたなアイツら…」
　生チョコとか与えたら酷い有り様(ご想像にお任せします)になると思ってチョコチップの入ったクッキーを作ったのだが…。
「…食べかすくらい捨てろよ。作り手に失礼だわ！」
　ぐちぐち文句を垂らしながらさっさと片付けを終わらせて、隣のクラスの料理研究部部員に休む主旨を伝える。

　行く気になれない。どうしても。

　階段を下りて、上履きをスニーカーに履き替え、派手に砂埃の舞う校庭を尻目に校門を右に曲がった。
　その時。

「谷木さん！」

　後ろから、先輩の聞いた事ないような大声が聞こえ、思わず振り返った。
　小走りで近付いてくると、必死に息を整えて。

「ごめん」
　謝った。
「え」
「あの、本当に情けない話、僕は好きな人の気持ちに全く気がついていなかったみたいなんだ。」

　は？

「チョコレート、美味しかったよ。…手紙も読んだ。」
　ああ、チョコにつけたラブレター。気づいたんだ、私の気持ち。届いたんだ。

「…僕も、同じ気持ちだよ。」
　好き、って言葉は、すぐに私の脳に染み渡った。好き、すき、スキ…か。
「わたしも好きです。部活入ってから、結構長い間。好きだったです。」

　彼は笑っていった。
「もしも僕でいいのなら、一緒にいて下さい。」
　思いっきり頷いた時、事切れたように涙が溢れておいおい泣いた。先輩はオロオロしながらも、背中を擦ってくれたり、抱きしめてくれたりした。ついでに、ハンカチとティッシュを貸してもらった。

　部活に戻ると、料理研究部カップル第１号だ、とか、リア充爆発しろ、とか料理研究部の部員達に祝福された。
　なんで知っているのだろうと思ったら、先輩が手紙を部室に置いて行ったらしい。…死ぬほど恥ずかしい。

　バレンタインデーの告白は大成功。かな