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言いようのない圧迫感が胃を押し潰している。

それに重ねるかのように一定のリズムで体が上下に揺れているのがわかった。

腕にも足にも力が入らず、持ち上げようとした首は引き攣るように傷んで脳からの支持を拒む。

なんだ?

俺は今どんな姿勢をしている?


時間が経つごとに思考から靄が晴れていくが、その反動か、三半規管がストレートな不快を喉へ押しやった。



「…ぉえぇ……」



ひしゃげた音が喉を震わす。

うええ、気持ち悪い

気持ち悪い気持ち悪い


乗り物酔いのようにぐらぐら揺れる不快感が再び胃を(なぶ)る。



無理だ、これ以上は無理だ、俺は吐くぞ!!



ぐらぐらした感覚の中で、誰へともつかない宣言を無音で叫び、清い空気を吸った途端、元凶だったリズムが止まった。



「起きたか、審神者」


ドサッ



「ゲホッッ!!」



放り捨てられたらしい体が空中を飛んだ。

落下した衝撃で盛大な空咳が破裂する。

背中がじんじんと痛む。物理的に痛い。


__何しやがるくっそやろぉ。


親の(かたき)を討つかの勢いで体を起こすと、目の前には無表情の大倶利伽羅と湯呑を差し出す鶴丸が等間隔に並んでいた。


「……は?」

「おいおい、君はまだ寝坊助かい?
頼むからそこでは吐かないでくれよ」


「吐くなら外でやれ」


「あ、これはただの水だ。ほら飲んだ飲んだ。

さっきからカエルが潰れたみたいな音出していたが君の喉は存外器用なんだなぁ」


「あれがッ、器用で出せてたまるかっ!」


ずいぶん好き勝手言ってくれる。
鶴丸から湯呑をひったくって程よい(ぬる)さの水を(すす)った。

圧迫され続けた胃にはまだ違和感が残っている。

流石に冷静になると自分がどんな状態でここまで運ばれたのか検討がついた。


要するにだ。

この鶴丸は俺の体を折り曲げて肩に乗っけて運んだらしい。

鶴丸の細い肩が腹に食い込んだ結果、胃は圧迫され浮遊感に苛まれ、酔った勢いで吐き気すら感じるはめになったんだろう。

なんて酷い…!

せめておぶってほしかった!!

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rimu - 更新停止ですか...。残念ですけど首を長くして待ってますね!あと、すごく面白かったです! (2022年4月10日 0時) (レス) @page12 id: 8604b433e3 (このIDを非表示/違反報告)
審神者 - 小鳥遊さん» わー!ありがとうございます!主人公への同意とても嬉しいです! (2019年9月6日 20時) (レス) id: 0fd095d97c (このIDを非表示/違反報告)
小鳥遊 - 最後の主人公くんのセリフ、わかりみが深いです…… (2019年8月12日 0時) (レス) id: adc8f79d68 (このIDを非表示/違反報告)
審神者 - メアリースーさん» コメントありがとうございます…!そう言っていただけると嬉しいです。 (2019年8月6日 22時) (レス) id: 7c80f3d29d (このIDを非表示/違反報告)
メアリースー(プロフ) - うわすき…… (2019年8月3日 16時) (レス) id: 6050ed781c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:審神者 | 作成日時:2019年7月5日 21時

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