留三郎が23匹 ページ23
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立花くんに例の宣言をしてから数日。勇気の出ない私は留三郎に想いを伝える事なんかしようともしていなかった。だって恥ずかしいもん。
お風呂から上がった私は自室に向かって廊下を歩いていた。体はぽかぽかでもう眠たい。部屋に帰ったら即行で眠ろう。
『あれ、誰かいるのかな』
いつもは使われていない自室の隣の空き部屋の隙間から小さな光が漏れ出ていた。不思議に思いながらも眠いので通りすぎようとすると、突然扉が開いて左手を引っ張られる。
『わわっ!』
そのまま部屋の中へ私を引っ張り込むと、その人は外から扉を開けられないようにつっかえ棒をしてしまった。
『留三郎……?何、これ、どういう事?』
「A……」
その人――留三郎は胡乱な瞳で私を見詰めた。
なんか、いつもと違って怖い。
『ど、どうしたの?何だか変だよ』
「変じゃない。俺はこういう奴なんだ、A」
留三郎に掴まれている肩が痛い。無意識だろうけど彼が力を加える度、骨が軋んでいるような気までするのだ。
「なぁ……。なぁA。お前誰が好きなんだ?誰に告白するんだ?」
留三郎の言葉に目を瞪る。
なんで留三郎がそれを!? あ、立花くんだ!立花くんしかいないよね。私が留三郎を好きって知っておいて、留三郎にそれを言うのは何故?性格!!
「誰だ?伊作?文次郎?仙蔵か?長次、それとも小平太?」
『ちょ、ちょっと待ってよ留三郎』
「もしかして五年生か?Aはあいつらとも仲良いから……。不破か?鉢屋か?」
『留三郎ってば』
駄目だ、全然聞いてくれない。留三郎は私を見ているようで見ていないのだ。しかも色々誤解されてる気が。
「頼むから、お願いだから」
留三郎はまた強く私を抱き締めると耳元で懇願するように囁いた。
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「俺を、好きになってくれ……」
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作者名:香月メル | 作成日時:2021年12月27日 11時