留三郎が22匹 ページ22
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「Aちゃん今日もありがとう。もう終わりにして良いわよ」
『はい、ありがとうございました。それじゃあおやすみなさい』
夜ご飯の後片付けを終えて食堂を出る。なんとなく空を見上げると星が綺麗に瞬いていた。
『立花くん?』
上を向いていたお陰で屋根の上に座っていた立花くんを見つけた。何してるんだろ。
「ああ、Aか」
あっという間に下へ降りてきた立花くんにちょっと罪悪感を感じる。
『ごめんなさい。何か大事なことしてた?邪魔しちゃったかな』
「大丈夫だ。それはそうとA。最近雰囲気が変わったな」
『雰囲気?』
え、馬鹿が露見してるとか?言動にあほなところが出まくってるとか?困る。
とかいろいろ考えていたら立花くんが吹き出した。何だか悪意を感じる吹き出し方でしたけど。
「そんなに悪い印象を与えている訳ではない」
『もしかして顔に出てた?』
「しっかりな。……A、恋をしているだろう」
心臓が一度大きく鳴った。少しして早鐘のように動き出す。脳裏には、あの人が。
『なに、急に』
「言っただろう。雰囲気が変わったって」
私って分かりやすいのかな。それとも立花くんが気が付きやすいだけかな。そうだと良いんだけど。留三郎に気付かれてると不都合すぎる。
「案ずるな。留三郎は知らないぞ」
『良かった。潮江くんも?』
「文次郎?何故だ?」
『だってほら、忍者の三禁』
酒。欲。色。忍者の三禁。
私の中で潮江くんは他の皆より三禁に厳しい印象がある。潮江くんだって私の大事な仲間だから彼に軽蔑されるのは嫌。それ以上に潮江くんのライバルである留三郎が私のせいで同じように思われるのはもっと嫌なのだ。
「文次郎は仲間の幸せを願える奴だぞ。あまり心配するな」
……同室の立花くんが言うのだ。きっと潮江くんもちゃんと話せば分かってくれるのだろう。
『そっか。……私、告白してみようかな』
すると立花くんはにっこりと唇を吊り上げて笑う。完全に悪巧みしてる笑い方だね。
「ほう。それは良いことを聞いた。それじゃ、体を冷やさないように早く部屋へ戻れよ」
意味深な言葉を残してどこかへ消えていった立花くん。少しして気が付いた。
なんで立花くん、私が留三郎を好きって知ってるんだろう…………。
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作者名:香月メル | 作成日時:2021年12月27日 11時