けまとめくんが18匹 ページ18
留三郎side
『ありがと、けまとめくん。もう大丈夫。落ち着いたよ』
にっこり笑顔を見せるAに俺も笑顔を返した。
『そういえばどうしてけまとめくんが家にいたの?』
「げっ」
突っ込まれたくないところを突かれた。これ、素直に言わないと駄目だよな……。というか騙せる自信がない。
「……学園長先生からAが縁談を受けたと聞いて。忍務のついでにAのところに行っても良いと言われたから。心配で……」
実際は学園長先生の庵に忍び込んで盗み聞きしたからAの縁談を知ったし、心配からじゃなくてAを取り返そうと思って来た訳だけどな。
『そっかぁ……。ありがとう。あ、何かお礼とか渡したいんだけど。けまとめくん欲しいものとかないの?』
ほ、欲しいもの?欲しいもの……。あ。
「物じゃないんだが、それでも良いか?」
『物じゃない?うん』
「じゃあ、名前で呼んでくれ」
Aがぱちくりと瞬きをする。可愛い。
『な……名前っ!?名前って、いつも呼んでるじゃないけまとめくんって』
「それは名前じゃなくてあだ名だろ……」
え、だって、そんな今更、なんてわたわたしているAを見てちょっと申し訳なく思えてきた。
「あの、Aさん?無理だったら良いぞ、やらなくたって」
『やりますやります!!』
Aは何度か深呼吸をしてから俺を見つめた。なんか恥ずかしいな。
『……食満くん!!』
「……え?」
『え?』
「いや……それは名字」
『……ですよねー。ちょっと待ってもう少し勇気を集める』
勇気を集めるって。
Aの顔が段々赤くなるのを見ながら多分自分もそうなっているのだろうな、とぼんやり思う。
『と、留三郎……』
「っ……!」
なんだこれ。頭ふわふわする。知らないうちに口角が上がりそうになって急いで隠した。
「……それ、これからも続けてくれるか?」
『んえ!?……あー、うん。けまとめく、留三郎が、望むなら』
結構、辛い。
幸せすぎて辛いとか初めてなんだが。
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作者名:香月メル | 作成日時:2021年12月27日 11時