バレンタイン（生徒×生徒）�� ページ8
【相澤side】
「うん。普通」
「普通ですけど、この味好きです」
「ほんと？ 帰ったらお禮言わないと」
「先輩が作ったから好きなんですよ」
「ナチュラルに褒めてくれるよね。ありがと」
「動揺しすぎです。照り焼きチキンに追い醤油はダメですよ。交換しましょう」
「いや、味感じないし大丈夫」
「大丈夫じゃないですね」
追い醤油チキンを無理矢理取り替えて食べればやはり辛い。
反応は面白いけど、そろそろ慣れてもらわないとこの人の身がもたないかもしれない。
完食して今度は先輩からのバレンタインギフトを受け取る。
黒箱に金色のリボンがかかった包裝を丁寧に解くと、コーヒーとチョコレートの詰め合わせが出てきた。
「ブラックで飲んだり、苦かったらミルクを入れたり、チョコが甘かったらコーヒーと合わせたり、好きに食べてね」
プレゼントは勿論嬉しい。
しかし、プレゼントのセンスに完敗した悔しさもある。
來年からの參考にしようと思いながら、早速口に一つ放り込む。
「うまいです」
「よかった。コーヒーも入れてこようか。相澤は座って食べてて」
「ありがとうございます」と言ってもう一粒食べる。
カカオ86%。
苦味とともに渋みもある味は、甘いだけではないチョコレートの奧深さを感じられた。
ティーバッグのコーヒーはケトルのお湯を注がれることで自身の色を水へと移す。
砂糖もミルクもいれずに飲めば、僅かにあったチョコレートの甘さが喉の奧へと消えていった。
これなら先輩でも食べられるんじゃないかと、物は試しで先輩にも伝えた。
「あぁ。これなら大丈夫かも」
「よかった。それなら一緒に食べましょう」
「相澤にあげた分なのにいいの？」
「それなら俺だって味噌汁飲みましたよ」
「それもそうだね」
黙って食べて、飲んで、目が合って。
そういう雰囲気になって、お互いの体に手を添えて、唇が重なって。
舌同士が触れ合い、苦いのか甘いのか分からない。
エアコンのモーター音と水音が部屋に響く。
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作者名：三味線 | 作成日時：2022年2月14日 16時
