バレンタイン（生徒×生徒）�� ページ7
【相澤side】
アナウンスが流れたので倒れそうな先輩を支えながら、俺達は荷物を持って出口へ向かった。
東京駅で家族用のお土産を、スーパーで食材を買いこむと結構な量になった。
先輩が持参していたエコバックを受けとる。
「いやそんな気を遣わなくてもいいよ」
「俺が持ちたいんです」
「えぇ……イケメン。献上します」
「貰っても困ります」
最近なんとなくだが先輩をキュンとさせる言い回しを当てることができるようになってきた。
手を繋いで先輩のマンションへと向かう。
「何もなくてごめんね」と言う通り、ローテーブルだけが部屋の真ん中にあった。
手洗いうがいを済ませている間に先輩は雄英の体操服に着替える。
「晩御飯食べよっか。
ご飯は早炊きして、味噌汁は出汁とるの……顆粒使うか……いや美味しいの食べて欲しいしなぁ」
「もしよかったらこれ食べてください」
そう言って俺が渡したのはお湯を注げば出来上がる味噌汁。
ただの味噌汁ではなく、1日に摂るべき量の半分くらい野菜が入った10種類のフリーズドライ食品だ。
「もしかしてチョコの代わり？」
「甘いの苦手と言ってましたし、インターンが終わってからの自炊が面倒と言っていたのでちょうどいいかと思って」
先輩はジッと見つめてからそれはおかしそうに笑った。
しまった。甘いものが嫌いでもお菓子の方がよかったんだ。
今からでもコンビニでもどこでもいいから買い直そう。
玄関に向かう俺を先輩が引き止める。
「ごめんごめん。そうだよね。バレンタインに渡すものなんて決まってないよね。
嬉しいよ。本当に」
「いやそんな無理しなくても」
「無理してないよ。俺甘いもの苦手だけどやっぱりこの時期にもらうのはお菓子ばっかでさ。
貰う側が言うのもよくないけど、俺の気持ちよりもイベントを楽しむために渡してきてる感じが嫌いだったんだ。
ちゃんと俺のことを見てくれてありがとう。
大切に食べるよ。相澤はどれがいい？」
2人で別々の味を選んで、一緒に作ったご飯を食べる。
洗いものを並行することで、1口コンロしかないキッチンでも広々とスペースを取って料理をすることができた。
出来上がった料理は特別うまいわけでもなく、まずくもない。
備え付けのクローゼットから取り出したクッションに座り並んで食べる。
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作者名：三味線 | 作成日時：2022年2月14日 16時
