バレンタイン（先生×プロヒーロー）�� ページ12
【相澤side】
「全然記憶ない……。ボーッとする」
「一緒にお風呂入りましょうか。スッキリしますよ」
「うん。そうする」
先輩の体の隅々まで洗って、大人2人が入っても余裕な浴槽に浸かった。
俺の足の間に座っている先輩が頭を胸板に押し付けて見上げてくる。
「昨日のバレンタイン一緒に過ごせなくてごめん」
「体調の方が優先ですし、気にしなくていいですよ。
体調はどうですか？」
「寝過ぎて眠いし、ダルい。お腹減ったくらい。
吐き気とか頭痛とかそういうのはないよ。
世話してくれてありがとうね」
先輩はお湯を手のひらに溜めて遊ぶ。
肌に新しい傷は見えず、残っているのは新人の頃についた傷だけだ。
ネットニュースになっていたので先輩の事務所の騒動は知っている。
俺はアングラヒーロー、先輩は日の下で前線に立って活躍しているため現場で会うことはなく、お互いの進捗はニュースでしか知らない。
守秘義務もあるため、仕事のことは深くまで聞かないことが暗黙の了解だった。
徹夜なんて身体に悪いことはやめてほしいが、俺だってそうしなきゃいけない状況も幾度とあったし、そのときは黙って支えてくれた。
心配は心の中で、声に出さない。
「そうだ。お風呂上がったら茶漬け食べようと思うんですけど、先輩は……」
「食べる！」
宣言通りに髪を乾かしてから茶漬けの用意を始める。
茶漬けの素やふりかけを入れているボックスが膨らんでいることに気づいたようで、先輩は目を輝かせて味を選ぶ。
「今年のバレンタインはこれか！」
「お菓子よりもこっちの方がいいんでしょう」
「うん。美味しそう。
深夜に帰ってきても、相澤が選んだご飯食べれるの嬉しすぎる。最高。
俺はね、今回はチョコじゃなくてお茶と酒にしたんだ。
職員室でも飲めるし、休みの日に宅飲みするのもいいなと思って」
そう言って、戸棚に隠していたティーパックの缶とご当地ビールの飲み比べセットを机の上に置く。
どちらも歳をとったオッサンのチョイスである。
送り合って12年。そりゃ歳もとるだろう。
「お互いにちょうどいいですね」
「早速お茶淹れてみよ」
今回は鮭を選んでサラサラと流し込む。
先輩の梅味も一口貰ったがどちらもうまい。
もし先輩の体調が万全ならビールの飲み比べもしたかったが、また別日にしよう。
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作者名：三味線 | 作成日時：2022年2月14日 16時
