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そこからは慌ただしく、忙しなかった
訳の分からないまま振りを入れ、理解が出来ぬままリハーサルが始まってしまっていた
運動をしていたのが良かったのか、振りを覚えることはあまり苦労しなかったけど、それでも始めての場所で戸惑いながら動いていたのを覚えている
「もう帰りたいよ…。」
小さく呟いた ゆうとくんが
「そんな事言うなら帰れ！」
と怒鳴られた事も忘れられない
2分30秒、短いはずなのにとてつもなく長く感じてしまう
ゆうとくんなんて半べそをかきながら踊っていた
私も追い掛けるのに必死で、傍から見たら半べそをかいていただろう
リハーサルが終われば、みんな同じ様な服を着て準備をする
合図を聞いて走って先程教えて貰った立ち位置まで全力で走る
番号10の上手3列目
これが私が始めて表舞台に出た時の立ち位置だった
キラキラと光る照明と聞いた事がある音楽
見たことも無い大きな機械がひしめき合うこの場所にギョッとしていまう
ちょっと怯んだ時に見えたのは、センターに立つ大きな背中だった
先程まで私達を追っていた機械が全部その大きな背中の方を向く
堂々としたその姿に、何故だか分からないけどドキドキした気持ちを感じた
そのキラキラに見惚れていればあんなに長く感じた踊りもすぐ終わってしまう
最後のポーズ、決まっていたはずのものではなくて
そのキラキラしたあの後ろ姿の真似をしたのは、今も誰にも知られていない、私だけの秘密だ
続く
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作者名：サンチ | 作成日時：2022年5月19日 1時
