コミュ障の鬼殺隊士は誤解と冷や汗を撒き散らしながら今日も往く。 (ページ49)

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勘違い43個ページ49

ウザイキモイとぶつぶつ言う私に鬼がやにさがった笑みを浮かべる。

「ﾍﾍ、そんなこと言ってられるのも今のうちだぜぇ？俺の血鬼術は……全てを喰らう！！！！！！」

鬼が跳躍してがぱりと大きな口を開いた。黒黒としていてそこの見えない、怖い口。

大ぶりの動作なのでひらりと身を翻し射程範囲から外れる。こいつ大したことないのでは？

そう思ったが…

『なんで貴方……間合いの外から内側に入ってるんですか…？！！！』

あろうことかその鬼は空間ごと食いちぎって私に突進してきたのだ。

そして私はそれをすんでのところでかわす。ダメだ、あまりにも血鬼術がトリッキーすぎる。直線に飛んできても空間を食べて真横から飛び出したりしてくる。

気配に聡いおかげでギリギリかわせてはいるものの攻撃に移行する時間が無い。

かといって無闇矢鱈と技を連発してもスカるし体力も消耗する。その上技を発動している時に腹を食いちぎられる可能性も否めない。

一撃必殺は無理だな。速くはないけれどどこから来るかわからないから一撃に全てを乗せて隙が出来たらいいカモだ。

ならば…なるべく持続時間の長く範囲の広い型を選ばなくては…

『語の呼吸・拾漆の型……』

桃色の踵が高い靴で踊るようにかわす。

くるくるくるり。動きに合わせて白魚の尾のように、ひらひらとフリルのついたスカートの裾が揺れる。

刀身は水色がかった銀色に輝き、硝子のように透き通っていく。

舞うような掴みどころない動作で敵を翻弄していく。

私の動きは少しずつ速くなっていく。まるで12時の鐘が告げる刻限に焦る灰被りのように。

『刻限告げる12時の鐘(シンデレラ)！！！』

優雅に舞う私の手に握られた刀が私の回転に合わせて何度も何度もターンする。煌めく刀身が竜巻のように風を起こすその光景はさながらダイアモンドダストだ。

こんな比喩表現のあとに言うのもなんだが実の所数打ちゃ当たる戦法である。

鬼は確実にダメージを蓄積していっている。そして完全に狩れる程弱くなった時、その時に刻限はやってくる。

ゴーンという鐘の音を幻聴する。

鬼もまたその音を聴いた時、すでに首と胴体はおさらばしていた。