コミュ障の鬼殺隊士は誤解と冷や汗を撒き散らしながら今日も往く。 (ページ44)

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勘違い38個ページ44

思考に沈んでいるとふいにスパン！と音を立てて襖が開いた。反射的に鼓を叩いて部屋を移動しようとしたが寸前に思いとどまる。

『た、炭治郎くんでしたか…』

「清兄ちゃん！！」

炭治郎くんの後ろにいた女の子が柿色の羽織の男の子にすがりついた。

炭治郎くんは私がいた事に気付き良かったと言って顔を綻ばせる。

彼は柿色くんが怪我をしていることに気付くと師匠から貰ったらしい傷薬を使って話しながら手当を施した。

「ここで何があったのか話せるか？」

そう問いかけると柿色くんは

化け物に攫われ食われそうになった。

そしてそこのお姉さんもあとから鬼に連れてこられて鬼と何か話していた。

それから他の鬼がやってきて自分たちを誰が食うか揉めていて、鬼が落とした鼓を叩いてやり過ごした。

と答えた。

「Aは何を話していたんだ…？確か鬼が苦手だったよな？」

『別に怖くなんかないですしぃ〜どう倒してやろうかと隙を伺っていただけなのでぇ…そもそもなにを話そうと貴方には関係ないですしぃ？』

わざと響凱に助けられたという事は伏せておいた。優しい炭治郎くんは、きっと心に余計な重石を抱いてしまうだけだと思うから。

炭治郎くんは少しだけ眉根を寄せたがこれ以上は追求せず稀血について言及した。

稀血の話題を出すと、炭治郎くんの鎹ガラスはけたたましい声で稀血の説明をした。

おいちょっとやめなさい不安を煽るのは。余計に兄妹たちが怖がっているでしょうが。可哀想でしょう。

すると炭治郎くんがすん、と鼻を鳴らして何かを感じ取る。

「俺はこの部屋を出る。落ち着いて、大丈夫だ。鬼を倒しに行ってくるから…」

『私も行きますよぉ〜任務怠慢だって報告されたらたまらないのでぇ〜』

素直に一緒に戦うから！なんて言えたらいいのにほんとに…炭治郎くんが殆ど気にしなくなってきているのが唯一の救いです。

「俺とAが部屋を出たらすぐ鼓を打って移動しろ。後は今まで通り誰かが来たら鼓を打って逃げるんだ。俺は必ず迎えに来る。戸を開ける時は名前を呼ぶから…」

そういって炭治郎くんは2人の両肩を手を乗せ目を真っ直ぐ見る。

「もう少しだけ頑張るんだ。……できるな？」

兄妹は神妙な顔で頷いた。それを見てえらい！強いな。と言って私たちは連れ立って部屋を出る。

ポンという鼓の音と同時に浮遊感が襲った。