コミュ障の鬼殺隊士は誤解と冷や汗を撒き散らしながら今日も往く。

勘違い18個 ページ21

……？…………。……、……！…………。







僅かな騒音と目覚め特有の耳鳴り。ザワつく人の声。瞼を開けるのさえ億劫で、そのまま微睡み続ける。






……目覚めてしばらくの間、母の胸の中かゆりかごにいるのだという錯覚に襲われた。







懐かしく温かい感覚。少しずつ意識を覚醒させていくと、誰かにおぶってもらっているのだとわかった。









歩くリズムに合わせて穏やかに伝わる振動と背中の温かさにすっかり安心しきって、相手の首にまわした腕をさらに絡めた。







私をおんぶしている人物はその行為によって私が起きたのだと知り声をかけてきた。









「…気分はどうだ。」




その声を聞いた瞬間私は飛び上がらんばかりに驚いた。





それはそれは目が物凄く覚めた。ぼうっとしている時にいきなり口にレモンをぶち込んでもこんな顔にならんわ、というレベルの覚醒顔になった。







そう、私をおんぶしていたのは……









『ぎ、義勇兄様……？なんで、私をおぶって……？』







両親を7つの時に殺され、その後10になるまで共に暮らして鬼殺隊になるべく切磋琢磨鍛錬し、さながら本物の兄妹同然の関係になった水柱・冨岡義勇…もとい義勇兄様。









兄にあたる人物は義勇兄様の他にも錆兎兄様というお方もいるのだが諸々の事情で今は割愛させてもらおう。









「……竈門炭治郎の最終選別の結果を見届けようと思ったら日程を勘違いして今日到着した。そうしたらお前が鳥居の所に横たわっていたので連れ帰っている。」








あっ義勇兄様はやっぱり天然なんですね。昔っからそういうとこありますし。天然というかうっかりというか、有事の際はしっかりしてるのに平時はどこか抜けているというか。







『それは…ご迷惑をおかけしてすみません。重いですよね、睡眠は今しがた取ったのでもう歩けます。』




「問題ない」





『あっいやそうじゃなくて。私もう歩けるので……』




「問題ない」




『ｱｯﾊｲ』





義勇兄様は変なところで頑固なのでこういう時は素直に従うが吉である。



これも全て私のことを気遣ったゆえの行動である。とても優しいのだが圧倒的言葉不足かつ口下手で誤解をうみやすい。





口下手なのは兄妹揃って似ているのだ、きっと。






ただ誠に遺憾なことに私は口下手によって悪い印象を植え付け、兄様は口下手によってクールな印象を与えるというところだ。




解せぬ。

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