コミュ障の鬼殺隊士は誤解と冷や汗を撒き散らしながら今日も往く。 (ページ18)

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勘違い15個ページ18

【炭治郎side】
最初はただの強がりだと思っていた。彼女からは怯えと恐怖、ためらいの匂いが濃く香っていたから。

きっと見栄を張っているだけだから、適宜助けに入ろうだなんてそう思っていた。

しかし俺は彼女の技を見て握った日輪刀を落とさんばかりに釘付けにされた。

それを見た俺はその技のあまりの完成度にただ目を見開いて呆然としていた。あまりに別格。あまりに見事。

技の美しさもさる事ながらほんの刹那の時間で鬼の頸のなかでも最も脆い場所を見つけ出した観察眼、それを寸分狂わず何度も刺し穿つ精密度は絶技と言っても差し支えないほどだ。

彼女はとても強い。もしかしたら今まで見てきた人の中で1番。

しかしその直後違和感に気付く。鬼の頸を落とした彼女の様子がおかしい。

所作の一つ一つが妙に幼く、少女然としていてまるで人が変わったかのようだ。

表情はさっきまで浮かべていた余裕綽々という笑顔とは全く違う無垢な笑顔で、血濡れの河原に居るとは思えないほど穏やかだ。

匂いも少し変わっている。それまでの彼女の匂いは甘く、それでいて肉桂(シナモン)のようなからさと憂いのある香りだったが、今は優しくふんわりした秋桜(コスモス)のような含みのない純粋な香り。

一瞬にして全てが変わってしまった彼女に恐れおののく。

人は、こんなにも短時間で変わるものだろうか……？

彼女は未だ微笑んだまま納刀すらせずこちらを見て佇んでいる。まるで鬼なんて斬っていないみたいに、ついさっきまで花冠を作っていた少女のように。

『A…だよな…？どうした、大丈夫か？』

彼女が本当にさっきの彼女なのか不安になって、そう問いかけた。目の前にいるはずなのに、先程まで共に魚を食べていた素直じゃない彼女が突如消え失せたような気さえしてしまって気が気でなかった。

俺がそう問いかけると彼女は数拍遅れて肩を震わせ、洗脳から解けたかのようにぱちくりと瞳を瞬かせた。

今のAからは秋桜の香りはすっかり掻き消えて、癖になりそうな、肉桂に似た甘辛く憂いを帯びた香りだけが漂っていた。