【gnki】夢見心地 (ページ29)

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◆ ページ29

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頭の綿を抜いては詰め、抜いては詰めを繰り返した約5分間。私の頭の中の綿は「得体の知れない恐怖」で凝り固まっていく。その恐怖を紛らわす為に、駅前に出来た喫茶店に行きたいだの、今日の昼ご飯何にしようだの考えてみるが、それ等全てが私の上に乗っている奴のせいで台無しにされそうで、無い未来を考えている虚しさで頭がいっぱいになりそうで逆効果だった。

人間の考え方は時に奇抜な物で、日常とかけ離れている＿非日常に目を背ける為に、それが日常と錯覚して見たりする。勿論、私も人間なのでその様な考え方はあるわけで。凝り固まった思考から逃げる様に、この上に乗っている奴はもしかしたら私の身内で、ドッキリを仕掛けようとしているのではないか、と考えてみる様になってしまった。一回日常に戻れたと錯覚すると、その安心感こそが毒で綿に染み込んでしまうという事すら忘れてしまう。その事を思い出した時は既に遅い、もう綿は毒にどっぷりと浸かっており、その安心感に手を伸ばし増やす様に、腹に植わっている違和感は身内の事だと"信じて"目を開けた。

「あ、おきた？」

私のしってる、ひとじゃない、
声から見た目、残念ながら全てが大外れ。元から乾坤一擲、一縷の希望に縋る様に手繰ってきたが、こうも簡単に途切れてしまうとなると、何処かが欠けた感じがして虚しさが襲ってくる。

「だ、れ。」

「そだなぁ、強いて言えば宇宙人とか？」

もしかしたら身内の一人かもしれない、だとか藁にもすがる思いで捻り出した質問を容赦なく非日常の定番で殴られる。目覚めたら上に知らない人が乗っているだけでも怖くて恐ろしい事なのに、その上宇宙人だの、人の非日常への憧憬が創りだした信じてもいない生物を名乗る、私はそんなこの人があまりにも恐ろしくて、今にも涙が溢れてきそうでたまらない。

けれど、この人に見つめられていると、まるで「この人は宇宙人だ」と信じて止まない気持ちになってしまう。カーテンの隙間から覗く光は、菜の花色の髪をぬらりと照らし出し、輪郭さえもが同系色で彩って見える。その様子は、正に『蠱惑的』と言う言葉が似合うだろう。
頭の中がぼうっとする中、眼窩の奥さえも貫いてしまいそうな視線と交差する。
ひやり。また、あの気持ちの良い手が私の皮膚をなぞる。＿あぁ、ねむたい、

「いいよ、寝てて。出来るだけ穏便に、優しくするから。」

＿やさしくって、なにをするの、
ぼやける視界の奥に、触覚がゆらりと揺れた、きがした。