恋と言うには遅すぎた【yk】 ページ3
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『焼きパン、私…○○くんが好きかもしれない。』
へ？
そんな間抜けな声が出た。
僕とAは小学校からの親友で、そのまま中学校までこの関係を築いてきた。
最初はAの事を、「ただの気の合う親友」としか見てなかった。
が、だんだんと自分の中でAに対する心が変わっていった。
でもそれは、自分の勘違いだ、と否定しつづけている。
ずっと親友でいたいのか、自分の気持ちを伝えるのか。
その事に何時も悩まされている。
だって僕とAは"親友"だから。
自分がAにそう伝えちゃったし、今更その気持ちを漂わせてもAが困るだけだ。
僕は、自分でつけた境界線を壊そうとしていた。
「そうなんだぁ、」
頬を染めるA。
僕にはそんな表情、だしてくれなかったのになぁ。
今更嫉妬しても遅いのに。
だからといって、Aと親友以上の関係を作っていきたい訳ではないのだ。
ただ、その好きな人とAが結ばれて、それでも僕にかまってくれるか。
それだけが気がかりだった。いわば、ただの心配だった。
でもそれは、僕だけが秘めていればいい気持ち。
Aに迷惑を掛けたくないから、ずっと我慢して、結ばれるのを応援した。
Aがその人物にに告白されるまでは。
告白された。
りんごのような頬をふにゃふにゃさせて、口元がこれ以上ない程にゆるんでいる。
そんなAを見た僕は、また嫉妬に駆られた。
いや、知っていた。
あの人もAの事が好きなのはもう把握していた。
二人はすでに、両片思いだったのだ。
あの人はずるいひとだ。
そう思った瞬間、やっと気づいた。
Aに秘めていたこの気持ちは、立派な恋心だと。
ずっと、ずっと自分に嘘を吐いていたのだ。
『焼きパン、どうしたの？』
昔手を繋いだときに感じていたこの胸の高鳴りも、
Aと話していたらすぐににやけてしまうことも、
クヨクヨした時に励ましてくれた時のあの嬉しさも、
普通にしていたスキンシップが少し恥ずかしくなっていったのも、
全て、すべて。
Aが好きな人という証拠だったんだ。
「いかないで…」
気づいたらすでに自分の体は動いて、Aにひしっ、と抱きついていた。
いかないで、ぼくをおいてかないで。
困惑するAを離さないように、昔みたいにハグする。
恋と言うには遅すぎた。
＿
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作成日時：2021年8月28日 0時
