10話 ページ11
おずおずと話始めた私は
手短に前回の突入の際に拳銃が汚れた経緯を伝えた
「…ほう?」
横で聞いていた朝霧さんが少し意外そうな顔をして目を細めている
「なので、出来れば外装を重点的に清掃…と言うか消毒してください」
やっと話し終えた私は、申し訳なさそうな顔を店主へ向ける
「はっはっは!面白い嬢ちゃんだな!一課の兄ちゃんのと合わせて、明日の朝までに終わらせてやるからまた取りに来い!」
そう言い終わるや否や、店主は店の奥へと消えていった
置いてけぼりをくらった私はなんとも言えない居心地の悪さを感じ、そそくさと店を後にしようと出入口へ向かう
しかしそんな私を朝霧さんが見逃す訳もなく…
「さて、時間も遅いですしよろしければ送って行きますよ?」
眼鏡の奥にある瞳が笑ってない!
「い、いえ!1度課に戻るので大丈夫です!」
もちろん嘘だ
このまま自宅へ帰ろうと思っていた
なんだろう、蛇に睨まれたカエルの気分…
いや、取調を受ける容疑者の気分か…
「そうですか、では厚労省まで送ります」
「えっ」
咄嗟に嘘をついてまで逃げようとしたのに
目の前の男はそんな私の気持ちを知ってか知らずか、どんどん話を進めていく
「何をしているのですか。いきますよ」
戸惑う私を他所に腕を掴んでツカツカと歩き出す
「えっえっ」
この人全然人の話聞かない!
菅野さんと芝さんもそうだけど、なんで捜査一課の人は勝手に話を進めるのか
本当にこんなんで取調べできるのか!?
あまりの展開についていけず、されるがまま流される
頭に大きなクエスチョンマークを浮かべながら朝霧さんについて行くと、近くに停めてあった車の助手席へエスコートされた
「どうぞ」
何がなんやら分からないが、私は促されるまま助手席に収まった
そのまま庁舎までの道のりは、特に会話らしい会話もなく
喉の乾きが限界を迎える前に私は開放された
「Aさん」
「はい?」
送ってもらったお礼を言い、車から降り立った瞬間声をかけられる
「明日は何時に受け取りへ行く予定ですか」
恐らく拳銃の話だろう
「えっと、今は抱えてる事件も落ち着いてるので、お昼休みに伺おうかと」
少し考えてから答える
「そうですか。では明日、迎えに行きます」
「え?」
「おやすみなさい」
「は?」
私の答えを待たずに朝霧さんは車を動かし、程なく見えなくなった
「え〜……ええぇ??????」
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作者名:さのすけ | 作成日時:2022年5月29日 20時