九番殺死体 ページ10
今日も今日とて解剖だ。
焼死体はまだまだ身元不明。
法歯学の先生(昨日の人と一緒)も交えて。
さぁ、頑張るぞ…。
…疲れた…。
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…皆様に同感いただけるか分からないが。
身元確認のヒントが見つかったとき、それは、テンションが上がるものだ。
例えば。
『おおっ!ペースメーカー』
「テンション下げろ。…8番、ペースメーカーに識別番号。《MTUR25J》」
『身元確認!!』
下げろと言われたのに上げる私もどうかと思う。
けど、やっと、これで、8番の方の身元が分かるのだ。
私は、ほっと一息吐いた。
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こんな解剖の中でも、微笑ましい(?)光景。
それは。
「70しゃい以上」
と法歯学の先生。
「70歳」
と系ちゃん。
「70しゃい以上」
と法歯学の先生。
自分の考えは譲らない、といったとこだろうか。
いや違う、言っているのだ、《70歳》と。
が、こっちもこっちで再び言う。
「70歳!」
と系ちゃん。
「70しゃい」
と法歯学の先生。
「歳!」
と系ちゃん。
本当、微笑ましい。
けれども、きりがない。
『クソいい加減にしよう』
「黙れクソが」
私と系ちゃんの会話に、隣でやってる三澄班のミココと夕子が笑っていた。
ちらりと見ると、六郎は、…拗ねてる?
『拗ねないでよ〜。妬かないでよ〜』
「!?ち、違いま、す…//」
照れてるし拗ねてるし妬いてるし。
私はクスリと笑ってしまった。
そして、また、解剖に集中。
全員の身元を見つけてやろう、と、意気込んでいた。
…ミココのあの発言まで。
「血腫の色が、…レンガ色ではなく、暗赤色」
『!嘘』
あたりが静かになる。
私は、パタパタとミココのもとへ駆け寄った。
流石は姉、私の行動を読んでいて、場所を譲ってくれる。
『熱焼血腫じゃない…。静脈洞の破綻による、《急性硬膜外血腫》』
「それって、つまり…」
私とミココは、顔を見合わせた。
目で、ため息を吐く。
「…焼死するより前に、後頭部を殴られた可能性がある」
ここで空気を読めないまこちゃん。
私たちの思っている、でも口に出さないあの言葉を言ってしまった。
「…殺人?」
『……murder』
私が言い直すと、静まり返っていた空気が、ピシリと、凍ったように思えた。
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作者名:桜絵笑美 | 作成日時:2018年5月8日 0時