拾壱生存者 ページ12
「…実は、生存者が見つかったんです」
「11番目の、男」
『eleven』
私が言うと、向島さんはうんと頷いた。
「時間と場所からして、火災現場から逃げたと見て間違いないでしょう」
『自力で?』
「…シャツに血がついていましたが、男性に切り傷等の外傷は無し」
スルー!?
私の問いに答えないのが悲しい。
分からないのか、もしかして。
「これが誰の血か、焼死体の中で一致する人物がいないかどうか、調べてくれ」
そう言うと、血塗れの服を取り出した。
…あれ、そう言えば。
「これが、9番の血だったら…!」
『犯人候補No1は、11番かなー』
私たちの言うことに、首を振られる。
…またか、もしかして。
「11番目の男の身元は、まだ不明です」
『2人に増えたぁぁぁぁ』
はぁぁぁぁ、と大きくため息を吐くと、ミココが私を後ろにして話し始めた。
「…火傷の状態は分かりますか?亡くなった10人の火傷の状態と比べることができたら、状況の解明の手がかりになります」
と、毛利さんがやっぱりと言ったような顔をする。
「いや、そう言われると思ってね。病院に捜査協力の依頼したら、教授先生がここに直接くるって言い出して!」
『UDIに。教授先生が。へぇ…』
それほど今回の事件は大きいのか。
それをうちらがやるって…。
問題ばっかりの中堂系もいるし、所長さん焦ってるだろうな。
…あれ、所長さんどこだ。
「いらっしゃいました!」
探していた人の声が聞こえ、私は振り向く。
そこには、見慣れた人が2人いて。
1人は、所長さんで…。
もう1人は。
「帝日大の『久部せんせー!!』…え?」
「あはは、Aちゃん」
「「《クベ》?…《Aちゃん》!?」
そこで私は、はっと気が付いた。
六郎が、私の腕を引いて後ろに隠したのだ。
「久部くんの、お父さん」
所長さんが言うと、部屋に沈黙が訪れ、そして。
「愚息がお世話になっております」
《愚息》、という、家族関係が明らかになる声が響いた。
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作者名:桜絵笑美 | 作成日時:2018年5月8日 0時