暴力結果 ページ45
『落ち着きなさいパプリカ』
「それ逆効果」
『あらそう？』
ミココに止められ、苦笑する。
あのパプリカ、いつまでつけてるんだろう。
そんなことを思っていると、ミココが私に向かってうなずいてきた。
成る程、と、意味を理解した私は、うなずき返す。
ミココは、淡々と語り出した。
「──…これまで、多くのご遺体を見てきた。ご老人から、小さな子どもまで。いつも思う。何故、この人は死ななきゃならなかったのか。」
それは、私もだ。
病気や寿命なら、何故この人はもっと長生きできなかったのか。
《殺された》と確信したときには、理不尽だ、と思う。
…そっか、ミココも一緒なんだ。
『…Ｙくんの背中には、たっくさんの痣があったよ。日常的に暴力を受けていた、痕が。』
これは、六郎から聞き出した話。
何だか言うのを躊躇ってたから、『言わないと私死ぬ』って脅したら、話してくれた。
本気じゃないことは、お互い分かってたけど。
Ｙくん……横山くんは、いじめのターゲットだったらしい。
毎日、何度も、蹴られて、殴られて。
飛び蹴りが遊びだったそう。
…分かってますよ、私が言うなって。
系ちゃんに謝っとくから。
横山くんは、白井くんを庇って、そのまま、…。
『痣ね、酷いほど、はっきりとあったよ』
痣の数は計り知れない。
それは、どんどん新しい痣ができていたという証拠。
死への、道だ。
「追い詰められた彼は、最悪の選択をしてしまった。法医学的には自 殺。でも私は、殺されたんだと思う。」
『人にじゃない。でも、人に。…法律ではどうもがこうと裁けない、《いじめ》という名の殺人。』
「あなたはそれを、大勢の人に伝えたかった」
法律で裁けないのなら、どうする？
そう考えた結果、きっと彼は、この実況を選んだ。
ネットの怖いところは、人が簡単に見れるところ。
そこを利用したんだ。
白井くんが、悲しそうに呟き、話し出した。
〔そうだ、殺された。あいつらに、僕に〕
《あいつら》。
横山くんをいじめていた奴等だ。
自分も入れたのは、きっと、助けなかったからだ。
いや、助けれなかったからだ。
〔僕も助けなかった。助けてくれたのに。…っ、間に合わなかった…〕
どれだけ、彼は悩んだだろう。
後悔しただろう。
謝りたくて、仕方なかっただろう。
死んだ人は戻ってこないのだ。
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作者名：桜絵笑美 | 作成日時：2018年4月17日 23時
