家訪問 ページ18
夜の町。
肌寒い。
歩いて時間をかけるのが面倒くさくて、走ってしまう。
そして見えてきたのは六郎の家。
私の、目的地。
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「…Aさん」
『六郎ー!わー、良かった。住所間違ってなかった』
「…まさか本当に来るとは」
『いや、来るでしょ!!』
親指を立て、六郎に見せつける。
所謂、グッドマーク?
「寒いので、中入ってください」
『わーい、ありがとー。泊めさせてもらいますね』
「本当に泊まるんですか!?」
『いや、泊まるでしょ!!』
「こんなやりとり、ついさっきもしましたよ!!」
軽く突っ込みを入れる六郎に笑ってしまう。
変わらないでいてほしい。
六郎は、「とにかく温かいお茶淹れますね」、と台所へ行ってしまった。
となると、私がすることは。
『ほへ〜、医学書だぁ』
「!?Aさんっ!?」
本棚にある、けっこうな量の医学書を手に取る。
さすが現役医大生。
「た、楽しんでますよね!?」
『うん』
「ええっ」
私は、医学書に視線を向けつつ、六郎に返事をした。
興味のある医学書ばっかりで、何だか楽しい。
借りようかな〜。←
「…Aさんは、何で法医学の道に進んだんですか?」
急に真剣な問いをかけてくる六郎。
私も、つられて真剣になる。
いや、これは真剣に返さなきゃいけないものなんだけど。
『…過去に関係あるから?』
「…過去のこと、聞いても良いですか?」
『ふふ、もう聞いてるよね』
ニコリと笑うと、六郎は「すみません」と軽く頭を下げた。
可愛いな。←
『…六郎になら話しても良いよ』
「……本当ですか?」
『うん、もちろん』
私は、六郎の目の前に座り直して、過去のことを話始めた。
家族以外に話したのは、これが初めてだった。
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作者名:桜絵笑美 | 作成日時:2018年4月17日 23時