不幸な愛のお話 (ページ13)

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▷暗室ページ13

しばらく手を引かれて歩いていると、チョロ松さんが立ち止まった。

チ「ここだよ」

『…え？』

目の前には墓石しかない

『冗談…ですよね？』

チ「……」

墓石には、神父様の名前が書いてあった
一瞬、何も頭に浮かばなかった。

『…うそ』

チ「人間界と悪魔の世界では、時間の進み方が違うんだよ」

『でもどうして』

チ「僕に触れてた間、君は半分死んでたような状態だった。だから時間の進み方もあっちの世界と同じだったんだよ」

やっと理解した。と同時に、時間が止まったように絶句した。

チ「つまり僕達は5日間あの研究所にいて、こっちの世界でAちゃんは50年間行方不明になってたんだ」

『…ははは』

頭は真っ白で、目の前が真っ暗で、もう笑うしかなかった

もう海の波の音も、潮の匂いも感じられない

『酷いよ…』

最初からこの悪魔は、私を逃す気なんか無かったんだ。
私に勝算なんか無かったんだ。

チ「もうこの世界に君の居場所はないよ。一緒においで、Aちゃん」

『…..』

チ「Aちゃ──』

『私を嘗めるのも大概にして』

そう一言言い放ってチョロ松を突き飛ばし、私は背中から海に飛び降りた。

チョロ松さんが目を見開いて私の腕を掴もうとするまで、全てがスローモーションに見えた。

滑稽だ

(私の人生、何だったんだろう)

月がどんどん遠ざかって、やがて視界がぼやけて何も見えなくなった。

どうか来世は報われたい＿＿