初期刀？いいえ、初期槍です。《番外編》【刀剣乱舞】

その７ ページ9

そんな誤訳もいいところ、則宗さんが半笑いでそう伝えると山鳥毛さんは覚悟を決めたかのように静まってから頷く。

いや言ってない言ってない、そんな事一言も言ってないから！！

ちょ、何立ち上がって近づいてきてんの、やめてマジでやめてホント来ないで、誰か助けて！！


山鳥毛「本当にすまなかったな、小鳥…これで機嫌が治ってくれるのなら、私はいくらでも君の要望に答えよう。」


則宗「…だそうだ。ほら、行け行け」


そう言うと、ようやく則宗さんは私の口元から手をパッと離してくれる。

そして、そのまま私を山鳥毛さんに向けて軽く押した。


「っちょ、待ってのりピー、それマジで私にとって洒落にならないやつだから、

ちょ、山鳥毛さんもッ…ヒャアァアッ！！？」


――だが、そう叫んでも最早後の祭り。山鳥毛さんは軽くしゃがんだかと思えば、『失礼』と一礼してからあっという間に私をそっと抱え上げた。

その手付きは本当に優しく、まるで本当に小鳥を抱き上げているかの様な心地よさを感じた。


「ア、ァ、ぁ……」


山鳥毛「…ふふ、小鳥は軽いな」


――こんなワイルドで大人なイケメンに姫抱きされた上にいい声で囁かれるだなんて、普通の女子ならもうこの時点でキュン死しているところであろう。

…そう、普通の女子ならば。


私はと言うと…実は先程まで一緒に話していたお陰で、なんとか気絶はしない事ができた。

…フフ、進歩したでしょ。


…でも、一つだけ前と変わってないところがある。


「ふ、ぅ、

ぅえええっ、ゆるじでぐだざあぁああい…！！」


山鳥毛「こ、小鳥ッ！？」


則宗「うはははは、泣かれたな山鳥毛の！！」


……涙ってのは簡単にゃ止まらないんだな、これが。


そんな事を考えながらも、私は思わず恐怖したせいでボロボロと涙を滝の様に流してしまう。

大体のりピーよりデカイデカブツに出会った挙げ句、初対面で姫抱きなんぞされたら私の精神が持つ訳ないだろう、いい加減にしろ…

っていうかそもそもこのジジイ私の事一番長く知ってるのに、私がデカブツ嫌いなのわかってたのにも関わらずちょっかい出してたからな、本当に悪質極まりない。


山鳥毛「ご、御前、これはどっちかというと逆効果だったのでは…！？」


則宗「いやいや、気絶しないだけマシだぞ？てっきり僕は気絶すると思ったんだがな」


「うあ゛ぁ゛ああぁんッ、則宗さんなんかきらあぁあいい！！」


山鳥毛「あ、待ってくれ小鳥ッ！！」

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