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欲張りな。 ページ5
繋いだ手を優しく握り返されて思わず顔を見ると、目が合って思わず目を逸らす。
腕が触れ合う位に距離が縮まり、耳元で“Aちゃん。”と呼ばれて、キュッと胸が苦しくなる。
翔「呼んだだけ(笑)」
少年みたいに笑うその顔に、また苦しくなる。
翔「俺の事は呼んでくれないの？」
覗きこむように私を見て笑う。
まるで何かを期待しているかのように。
A「えっ。」
翔「プライベートで“先生”は、卒業だよ。」
A「・・・。」
翔「翔って呼んで？」
A「…しょう。」
満足そうに笑うと“俺もAって呼んでもいい？”なんて、真ん丸な瞳で私に聞くから頷くと、繋いでいない方の手がそっと頬に触れる。
大きな掌から伝わる温もりに、心まで包まれるようで安心した。
ほのかに華やかでフルーティーな香りが手首から香る。
病院では感じた事のない、その香りにまたドキッとさせられる。
翔「少しずつ、俺達のペースで進んでいこう。」
A「はい。」
“二人きりの時は敬語も、ね”と、また少年の様に笑う。
頬を包んでいた掌がそっと離れていく。
さっきまでの温もりはあっという間に消えてしまう。
もっと、触っていて欲しい…って思ってしまう、欲張りな自分が顔を出していた。
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作者名：晴日。 | 作成日時：2018年10月28日 23時
