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九十二話 ページ9

鯉「噂話はよしなさい。本当に逃げきれたかどうかなんて…誰にもわからないのよ。」


入ってきたのはこの部屋の主、鯉夏花魁だった


はぁい、と禿の女の子は返事をする


すると鯉夏花魁はこちらを向いて言った

鯉「運んでくれたのね、ありがとう。おいで。」

炭「『はい。』」


私たちは緊張しながら近づく

すると手のひらに少し重みが加わった


鯉「お菓子をあげようね。ふたりでこっそり食べるのよ。」

『わぁ...!』

つい、声を洩らした私を見て、花魁は微笑む

『っ、』

カァァァ、と効果音が付きそうな勢いで、顔に体温が集まる


「わっちも欲しい!」

「花魁、花魁。」

禿たちもこちらへ駆け寄ってくる

鯉「だめよ。先刻食べたでしょう。」

困った顔をする花魁

すると炭治郎君が尋ねる

炭治郎「あの…“須磨”花魁は足抜けしたんですか?」

微かに反応する花魁

鯉「!、どうしてそんなことを聞くんだい?」


炭「須磨花魁は私の…私の…」


だくだくと汗を流す炭治郎君


これはまずい

炭治郎君は見たところ嘘をつけない

ここは私が_____


炭「姉なんです。」


『』←



その顔を見て、私たちは青ざめる


これは…

とてもつらい…

顔…?


少なくとも、普通の顔ではないぞ…←



鯉「姉さんに続いて、あなたも遊郭に売られてきたの?」

この際気にしないことにしたのか、花魁は炭治郎君に尋ねた

例の顔をしながら炭治郎君は答える

炭「は…はい。姉とはずっと手紙のやりとりをしていましたが、足抜けするような人ではないはずで…」


いいぞ炭治郎君

その調子←


鯉「確かに私も須磨ちゃんが足抜けするとは思えなかった。しっかりした子だったもの。

男の人にのぼせている素振りもなかったのに。

だけど日記が見つかって…それには足抜けするって書いてあったそうなの。

捕まったという話も聞かないから、逃げきれていればいいんだけど…」


『…』



“足抜け”

これは鬼にとってかなり都合がいい

人がいなくなっても、遊郭から逃亡したと思われるだけ

日記は恐らく偽装だ

炭「(どうか無事でいてほしい…)」

どうやら炭治郎君も気がついたらしい


『(必ず助け出す。)』

九十三話→←九十一話


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作者名:まかろん | 作成日時:2021年1月7日 6時

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