氷花はいつか溶けたい参 (ページ40)

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百二十二話ページ40

宇髄side

目を覚ますと、泣きながら妻たちが駆け寄ってきた。

周りの建物はほぼ全て崩れ落ちている。

他の奴らはどうなった？

須「いやあああ、死なないでえ！死なないできださぁぁい天元様あ～～～」

俺の妻の一人である須磨が俺の有様を見て泣き叫んでいる。
正直少しうざいんだが。
けれども俺を心配してのことだとはわかっている。

須「せっかく生き残ったのに！！せっかく勝ったのに！！やだあ、やだあ！！

鬼の毒なんてどうしたらいいんですか。解毒剤が効かないよオ！！

ひどいです神様。ひどい！！」

他の妻たち_____雛鶴とまきをも目に涙を浮かべて下を向いている。

三人ともとても悔しそうだ、というか須磨のは悲しみよりも悔し涙だろあれ。

…なんなんだ、この微妙な気持ちは。

兎に角、いつ毒が回って死ぬかわからないからな。今のうちに話せるだけ話しておこう。コイツらだけでも。

本当は命懸けで共に戦ってくれた俺の後輩たちにも言えることは言いたいんだが…

『最後に言い残すことがある。』

そう思いながら口を開き、掠れた声を振り絞った。

やっぱり、人生の最後は、今まで支えてくれた愛しい妻たちに見守られながら締めくくるのが一番だな。

なるべく心に残るような、いいことを言っておこう。

『俺は今までの人生「天元様しなせたら、あたしもう神様に手を合わせません。」…。』

須磨ァ…

須「絶対に許さないですから！」

ま「ちょっと黙んなさいよ。天元様が喋ってるでしょうが。」

いつものように須磨とまきをが言い争い始める。

雛「どっちも静かにしてよ…！」

そしていつものように二人を止める雛鶴。

ま「口に石詰めてやるこのバカ女！！」

須「うわあああ、まきをさんがいじめるううう！！」

争いは増す一方だった。

「バカ、だまれ」

「オ゛ェ゛ッ、本当に石入れたあ！！」

などと聞こえてくる。

っていうか嘘だろ？何も言い残せずに死ぬのか俺。

毒で舌も回らなくなってきたんだがどうしてくれんだ。言い残せる余裕あったのにマジかよ。

するとひょっこりと竈門妹が顔を出した。

「「「！？」」」

なんでお前ここにいんだ。
物凄い時に来たな。
なんだかすまんな騒がしくて。

そんなことを頭の中で言っていた。
この時の俺はどうかしていた。
何もかも諦めていた。

のだが。

ピト

俺の額に冷たい感触が伝わる。
竈門妹の手が触れたんだと、理解した時にはもう遅い。

ボッ

燃えた。