【刀剣乱舞】双子審神者と刀剣男士【参】 (ページ23)

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第3話撫子の薬ページ23

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撫子は一人、自室で一つの小瓶を見つめていた。
小瓶の中には、小さな白い錠剤が半分ほど入っていた。

「1粒飲めば深い眠り。3粒飲めば彼岸の彼方……」

呪文のようにそう唱え、手に持っていた小瓶を傾ける。
シャララと小さな錠剤が小瓶の壁にあたって小さく音を立てた。
その小綺麗な音を聞き、撫子は寂しげな笑みを浮かべる。

――――『ねぇ、撫子ちゃん』

記憶の中の義母が、そう撫子に語りかけた。
そして、小さな錠剤が入った小瓶を義母は嬉しそうに撫子に渡した。

『貴方にコレをあげるわ』
『これは…』
『1粒飲めば深い眠りへ。3粒飲めば彼岸の彼方……大事に使いなさい』

義母はそう言い、壊れ物を扱う様に、撫子の掌にしっかりとそれを握らせた。
義母に触れられ撫子は身を固くしたが、その触れ方に少しばかり驚いた。
義母が撫子に触れるのは、必ずと言って乱暴だったのだから。

だが、驚いたのはほんの一瞬だけだった。
義母の言葉を素直に受け取るのなら、この薬を1粒飲めば長い時間眠ることが出来、3粒飲めば彼岸の彼方―――つまり、死ぬという事だ。

――――今までの仕打ちでは、足りないと言うことですか……？

自身の死を望まれている事に、撫子は絶望した。
撫子の気持ちなど露知らず、義母は満足気な笑みを浮かべると義母は軽い足取りでその場を去った。

「――――主？」

撫子が記憶の波に揺られていると、障子の向こう側から加州の声が聞こえた。
撫子は小瓶を引き出しの中に仕舞うと、障子の方に身体を向け、「どうぞ」と呟いた。