第2話 苦手な理由 ページ22
.
「撫子はさ、元々はあんな性格じゃなかったんだ」
少し遠くを見ながら大和はそう語った。
大和の言う「元々」が分からず、加州は「ふぅん」と頷いた。
「昔はもっと笑う奴だった。お兄ちゃんお兄ちゃんって俺の行く先々についてきてさ…」
大和は撫子のことを話す度、その暗かった表情はみるみる明るくなった。
加州は撫子の笑う顔を想像したが、撫子は滅多に笑わない――笑っても悲しそうな顔をして笑うので、加州には全く想像がつかなかった。
だが、主が嬉しそうに話すのなら、彼女が笑えばそれはそれは美しいのだろうと考えた。
「主はさ、妹が笑ったら嬉しい？」
ふと気になって、加州は大和にそう問いかけた。
大和は少し驚いたように目を見開いたが、直ぐに微笑み「ああ、勿論だ」と言った。
「嬉しいどころか、泣いて喜んでやる！」
先程の暗い空気を吹き飛ばすかのように大和は声を張り上げた。
その自慢げな声に加州は思わず噴き出す。
「ぷっ、あはは！何それ！」
「笑うな！俺は本気だ！」
「だってさ！主は本当に妹の事が大切なんだなって思って…」
加州はそこまで言うと、ふと言葉を飲み込んだ。
そして気が付いた。
どうして、自分は撫子の事が苦手なのか。
近いようで遠い距離感が嫌だった。
目を離すと消えてしまいそうな雰囲気が嫌だった。
でも、一番嫌だったのは―――――
「……加州？」
急に喋るのをやめた加州を心配したのか、大和はそう問いかけた。
「ねぇ、主。主の妹―――いや、俺の主は、ちゃんと俺の事愛してくれるのかな？」
大和と入れ替わるように、少し遠くを見ながら加州は言った。
嫌だったんじゃない。
苦手だったんじゃない。
ただ、――――愛されない可能性があると思うと、怖かった。
「……加州」
大和は驚いたように加州の寂しげな顔を見つめると突然、乱暴に加州の頭を撫でた。
「うわ！ちょっ、やめてよ主！」
「加州が変な事を言うからだ！」
楽しげに笑いながら大和は加州の頭を撫でる。
加州は迷惑そうに大和の手を退けようとするが、その顔は満更でもなさそうだった。
「撫子がお前らの事を愛さない訳がないだろ？」
「……何でそんな事が分かるの？」
「分かるさ」
納得のいかない様子の加州に、大和は断言した。
その瞳は先程までの暗さはなく、真っ直ぐと加州の事を見ていた。
「だって撫子は俺の妹で、お前らの主なんだから」
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキー刀剣男士
御手杵
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 97人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
