【刀剣乱舞】双子審神者と刀剣男士【参】 (ページ21)

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第1話加州の憂いページ21

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「……」

ドラマが見終わった加州は、撫子がいる審神者部屋の障子の前に立っていた。
目の前にあるのは障子だというのに、その向こうに撫子がいると思うと変に緊張した。

――――そんなにあの呼び方が嫌なら言ってみればいいじゃん。

大和守の声が頭に大きく響いた。
加州はその言葉を掻き消す様に頭を左右に大きく振った。
加州より先に顕現した大和守は、どうやら自分に対して先輩ぶりたいのか、やけに態度が大きい。
いつもはその態度に腹ただしさを感じるが、今となってはその気が置けない雰囲気が恋しかった。

「？何やってんだ？加州」

障子の前でウロウロとする加州に、一つの影が声を掛けた。
顔布を頭の後ろに回し、青いジャージを着たこの本丸もう1人の審神者である大和であった。

「あ、主…」
「そういえば、加州もそろそろ練度上げだったな。人の身体にはもう慣れたか？」
「うん。お陰様で」

加州はそう言うと、自身の手を開いたり閉じたりした。
その様子を見た大和は、「そうか」と一言呟いた。
そして、加州の様子を改めて見て、少し困ったような笑みを浮かべた。

「……苦手か？撫子のこと」
「……！」

図星を突かれ、加州は思わず目を見開いた。
それを見た大和は「当たりか」とまた困ったような笑みを浮かべた。
そんな大和の表情に、加州は罪悪感を感じ、自身の視線を斜め下にやった。

「ごめん。主。俺…」
「何で加州が謝るんだ？」

謝る加州に、大和は笑いかける。
すると、大和は縁側に腰掛け、ポンポンと隣を軽く叩いた。
突然の行動に首を傾げるも、加州は素直に大和の隣に座った。
加州が隣に腰掛けている間、大和は撫子の部屋に続く襖を寂しげな瞳で見つめていた。

―――その瞳は妹を慈しむ思いも、心配する思いもなく、ただただ大和自身のことを責めていた。
彼もまた、加州と同じで撫子との距離を計り兼ねていたのだった。