【刀剣乱舞】双子審神者と刀剣男士【参】 (ページ20)

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第8章渾名(あだな)の理由ページ20

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「初めまして、加州清光様」

双子本丸に20番目に顕現した刀剣男士である加州清光が初めに見たのは、自身に向かって深々と頭を下げる白髪の少女の姿だった。
所作の一つ一つが丁寧で、少女の周りの空気だけ別物であるかのようだった。
どこからどう見ても人間だが、その異様な雰囲気に加州は一歩後ろに下がった。

少女はそんな加州の様子など気にもとめずに顔を上げ、その射干玉(ぬばたま)の瞳に加州を映した。
その瞳は曇りがなかったが、光もなかった。

「これからよろしくお願い致します」

＊

「清光ー。主が呼んでるよ」

顕現してから早数日。
打刀部屋で早速気になったドラマというものを見ていると、大和守安定が声を掛けてきた。

「なにー？今いい所だったんだけど」

加州はそう言いながらもテレビから目を逸らさない。

「そろそろ人の身体に慣れてきたと思うし、本格的に清光の練度上げ開始だってさ。それ終わってからでいいから」
「…ねぇ、呼んだのってどっち？」
「妹の方―――って、そんな変な顔すんなって」

呼んだのが妹―――撫子だと知り、加州は少し困ったような顔をした。

「変な顔なんてしてないって！」
「ううん。してた。…というか、そろそろ諦めなよ。主は僕が顕現する前ああいう感じらしいしさ」

不貞腐れたように頬杖をつきテレビを見る加州の、机を挟んだ向かい側に大和守は座った。

加州清光は撫子の事が苦手だ。
嫌いという訳では無い。
ただ、撫子の周りにある雰囲気が苦手だった。
常に自分と撫子の間には透明な壁や硝子があって、近くに居ても何処か遠い場所に居るように感じるのだ。

「そんなにあの呼び方が嫌なら言ってみればいいじゃん」

常に置いてあるお菓子が入った器から煎餅を選んだ大和守は、それを齧りながらさも当たり前のように言った。