【刀剣乱舞】双子審神者と刀剣男士【参】 (ページ11)

今日:10 hit、昨日:3 hit、合計:12,647 hit

第8話歓迎会の終わりページ11

.

大和は山姥切の隣に腰を下ろす。

「あの時はありがとうな」

暗い空を見ながら大和はそう言った。
「あの時」というのは大和が自分と撫子の過去を全員に打ち明けた時のことだ。

「本当は、俺たちの過去の話は極力しないよう撫子と約束をしたんだ。俺達はまだ20年も生きていない子供だが、お前達は100年以上も生きている刀の付喪神だ。そんな者達を前にしたら俺達の過去なんて小さいもので、何より、もし話して撫子が傷付く姿を想像すると、俺が耐えられなかった」

曖昧な笑みを浮かべ、大和はそう言う。
そんな大和を、山姥切は静かに見つめた。

「話をすると決めた時、俺はお前達に斬られても構わないと思った。俺はそれ相応の事を撫子にしたし、何より、撫子を暗い闇から救ってくれたお前達になら…ってな。だから、山姥切にああ言われて━━少し、嬉しかったんだ」

俺が斬られても構わないと思ったのは、山姥切の言う通り、己の過去から逃げていたからだ。
斬られることで、俺の過去が全て許されるものだと思っていた。
だけど、俺がいなくなることで悲しむ存在がいることに気付き、そんな思考はただの自分勝手な自己満足だと思うことが出来たんだ。

「…俺は、皆の意見を代弁しただけだ。だから、感謝するべき者は…俺じゃないはずだ」
「でも言ってくれたのは山姥切だろ？勿論、お前だけじゃなく、皆には感謝してもしきれねーぜ」

大和はそう言うと、にかっと先程とは違う笑いを浮かべた。

「じゃ、そろそろ俺は戻るから、山姥切もさっさと戻ってこいよ」
「遅いと兄弟が煩いからそろそろ戻るつもりだ」
「心配なんだよ。山姥切のことがさ」

じゃあな〜と手を振り、大和は大広間へと姿を消した。

＊

「うっわ…」

大和が大広間へと戻ると、そこはお酒の匂いが充満する混沌とした空間だった。
机の上にある食べ物はほぼ食べ尽くされており、部屋の隅では大般若と日本号、次郎太刀による飲み比べ大会が開催されようとしていた。
傍では博多が誰が多く飲めるかと賭けを始め、殆どの男士がそれに乗る。
撫子は何故か飲み比べの審判役として輪の中央にいた。

「あ、主人も一緒にやるばい！」

大和に気付いた博多が嬉しそうに手を振る。

…いつもなら止めて怒っているところだが、大広間にいる68振りを見ていると、何かが胸の奥から込み上げ、大和は止める気にはなれなかった。

「…ああ！」

代わりに、大和は精一杯の笑顔と声で返事をした。