【刀剣乱舞】拝啓、師匠。どうやらミーは審神者らしい【REBORN】

09：一生涯のパートナー ページ9

「お好きな刀をお選び下さい。どれも新たに審神者となる貴方に相応しい男士たちですので」
　
両腕を広げ、にこやかに告げる。
パンフレット通りであれば、
この五振りは、本丸での生活に支障が無いよう
既に、男士としてのイロハをある程度は
仕込まれているらしい。
確かに、これから本丸を共に運営していく上で、
事前知識があるのとないのとでは、雲泥の差である。

もし、その知識が与えられねば、
例え力が強くとも審神者と男士は、
右も左も分からない、産まれたての子鹿よりも弱々しい存在が、赤子連れで戦場に赴くも同じだ。
命知らずにも程がある。

「一生涯を共にするパートナーですから。有りとあらゆる困難に立ち向かえるよう、万全な状態にしております」

だから、気楽に選んで欲しい
そう自慢げに胸を叩き、男はフランを促した

「誰にするんだい？」

面倒そうに組んだ右膝を肘掛に乗せ
マーモンがフランをみやる
視界の端に映る、ヤケに鮮やかな布端や鎧は
意図的に意識外へと押し出した。
幾ら文化的にも、コレクター的にも
価値ある逸品だと分かっていてても、
誰が、明らかに曰く付きな品など貰う物か。
　
「三秒でキメねぇと刺すぜ」
　
ナイフをチラつかせ、早くと急かす。
無論、フランが口を開いた時点で三秒など
過ぎ去ってしまうから、ただの嫌がらせだ。

「先パーイ、そろそろ趣味の悪い激ダサナイフ投げるの止めて下さーい」
　
ナイフの隙間を縫った絶妙な配置で、
銀装飾がまた増えた。
これで総計九本。こんなに横槍を入れられては
即決出来るものも出来やしない。
男を見てみろ、完全に顔の左半分が
引き攣っているではないか。

けれどまぁ、まともに相手すればするほど
この精神構造が複雑骨折した構ってちゃんは、
図に乗りやがるので。
溜息だけつき、かぶりを振った。
蛙から痛々し過ぎる針鼠になっては堪らない。

「じゃぁ、彼にしますー」

フランが、指差したのは、
全体的に白い雪が舞っている桔梗色の鞘。
上目遣いに目線で、振れる許可を強請れば
満面の笑みで頷かれる。
あまりの軽薄さに、眉を顰めつつ
鞘へ中指を落とした。

────刹那

フランを中心に桜吹雪が舞い踊る。
室内を埋め尽くさんばかりの鮮やかな花弁と
濃厚な桜香に、ベルとマーモンは顔を覆う。

交差させた腕の隙間から、垣間見えた男は、
死炎弾をも跳ね返す窓すら唸らせる豪風の最中
ただ悠然とその場に佇み
発生源の真正面で、一切身動きもせず
吹雪の中心を見詰めていた。

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